先日、友達と「ジェロの『 海雪 』がヤバい」
という話になったんですけど、ジェロさんの『海雪』はヤバいですよ。
※この記事は2013年に書いた感想をリライトしたものです。
はじめに:ヤバい。
何がヤバいって、楽曲のとしての完成度がヤバい。
「俺選・今年聴いた良質な楽曲ランキング2013(仮)」の上位に食い込むであろう圧倒的完成度。
2008年2月20日に発売され、メディアにも結構取り上げられていたのにも関わらず…
最近までまともにチェックしていなかったのが悔やまれます。
何がそんなにヤバいのか。
結論から言うと…
色々なジャンルの要素を取り入れつつもちゃんと演歌していてカッコいい部分ですかね…
では、細かく見ていきましょう。
海雪
イントロ
演歌とヒップホップ
まず、冒頭の「ジャッ!ジャッ!ジャッ!ジャッ!テレレレテレレレ…」の部分。
コード感に演歌のテイストを感じる反面、サウンドの雰囲気はまるで”hip hop“。
この部分をループしながらラッパーがリリックを刻みだしても何の違和感も無いはずです。
しかし、この直後に尺八の音色でガラッと一気に”演歌”調に。
“hip hop“と”演歌”。
簡単には相容れなさそうな二つの要素が完全に融合されていてヤバい。
曲の構成のヤバさ
音楽は、基本的に2の累乗数※の小節数で進行するのが定石(基本的なルール)です。
※1,2,4,8,16…
しかし、『海雪』のイントロhip hopゾーンから演歌ゾーンは7小節で終わります。
さらに、続く尺八のメロディ部分は3小節で終わります。
つまり、ここだけで「2の累乗数の小節数で進行する定石」を2連続で破っています。
ヤバい。
音階のヤバさ
この曲調変わり目の尺八メロディは、「C#~G~♪」です。
冒頭のキーはF#mキー(#×3)だったので、本来はGの音は含まれません。
(F#mキーの構成音:F#-G#-A-B-C#-D-E)
いきなり音階に存在しない音を入れてくる…。
ヤバい。
…とはいっても「ソ」を短音階に無理やり混ぜるのではなく、この部分だけ和風な音階(陰音階)にモードチェンジする発想かと思います。
とにかく、いきなり予想を裏切る音をぶち込んで強烈なインパクトを与えているわけです。
一体…この10秒でどこまでやれば気が済むんですか…。
もはや、これはプログレといっても過言ではない…。(???)
※追記:これを書いた後CDを購入しました。CD音源ではMVにある「hip hopゾーン」が無く、尺八部分から曲がスタートするみたいです。…いや、それでも海雪の楽曲の素晴らしさには変わりはないですよ!
前奏
そして、演歌っぽい前奏が始まります。
しかし、ただの演歌テイストではありません!
まずはギターソロ!
この泣きのメロディ!普通に物凄くカッコいい!
…そして、ギターソロに耳を取られて聞き落しがちかもしれません。
ここでの兵(つわもの)はベースですよ。
後ろでファンキーなスラップ奏法をバチバチやっていて、それが最高にハマっててカッコいい。
この曲は全体的に、ある意味邪道なことをしているのに王道な雰囲気を壊していないのが凄いです。
いやぁ…イントロだけでどれだけ魅せてくるんでしょうね。
ヤバい。
Aメロ
…いよいよ歌が始まります。
「…こォ ごぉ えるぅ…」
まず、純粋にジェロさんの歌がめっちゃ上手い。
そして、発音も曲を聞いただけならネイティブな日本語スピーカーとしか思えない。
「演歌界の黒船」という異名は伊達じゃないと分かります。
そして、メロディは演歌調ながらもドラムはブレイクビーツっぽいですね。
ここでもまた一筋縄ではいかないアレンジ。
あと、ちょくちょく入ってくる ギターのオブリガートがまたカッコいい。
ヤバい。
Bメロ
これ、個人的にサビで来てもいいようなメロディだと思うんです。
でも、ここから更にサビにかけて盛り上げますからね。
こういうメロディの扱いは(作曲家的視点で)感動しました。
そして、そのサビへの入りですが、ジャージャ!ジャージャー…
と演歌の王道な雰囲気を抑えつつ…
そのメロディラインはギターが主導、しかもサビ直前でギターが
強烈なピッキングハーモニクスを鳴らします。
ピュィイイイイ!みたいな音です。
なんというか、ピッキングハーモニクスっていうヘヴィメタル的な要素を
なんの臆面も無くぶち込んでくるこの感じが最高にクールですね。
ヤバい。
サビ
ついにサビ!
あなた追って出雲崎悲しみの日本海
ジェロ – 海雪
愛を見失い岸壁の上落ちる涙は積もる事の無い
まるで海雪
テンポがよく、覚えやすく、かつ、インパクトのあるメロディラインです。
そして歌詞も良い!情景がイメージしやすいですね。
ちなみにジェロさんは、曲の公開当時は、冬の日本海を見たことが無かったため、
カリフォルニア州の海をイメージしつつ歌ったらしいです。
こういう努力や心掛けみたいなものが曲のクオリティを上げていくんでしょうね。
…そして、サビでも相変わらず色々な場所でさりげなく伴奏の
ギターやベースやクラビネットがカッコイイフレージングをしていますね。
かといって、ヴォーカルラインの邪魔をしているわけでもない。
素晴らしいです。
ヤバい。
後半部分
この楽曲は、この後2番があって、続いて3回目のBメロ~サビ…という構成になっています。
この3回目のBメロで、半音上のGmキー(♭×2)へ転調をします。
ここまで色々と攻めたアレンジをしてきて、ここでベタな「半音上転調!」
この行きすぎないバランス感覚!
ラストのサビはジェロさんも一段と”こぶし”をきかせて歌っていますしホントにカッコいい。
そして、アウトロはまた泣きのギターが唸っています。
何回も言いますが、カッコいい。
ヤバい。
結論:ヤバい。
決して演歌世代では無い僕の心にここまで響く。
ヤバい楽曲ですね。
追記:
ジェロさんは、2018年5月11日、芸能活動を休止することを自身の公式ホームページに表明され、現在は外資系のIT企業に就職してコンピュータ関連の仕事をされているようです。
ファンの方は寂しさもあるかと思いますが、もともと大学でコンピューター関連のことを学んでいたようですし、歌だけでなくそちらの才能もすごいのでしょう。
それにTwitterの更新は続けられているみたいです。