「作曲で転調したいけど、どうすればいいか分からない…!」人のために
10数種類の転調のやり方・考え方をまとめました。
では、いってみよう!(๑˃̵ᴗ˂̵)و
はじめに
転調先のバリエーションを知りたい方は、こちらの記事↓をご覧ください。
簡単に「転調の間隔」が調べられるウェブアプリ↓と…
この記事の内容を解説する動画を作成しました。
どちらも、この記事の内容を理解するのに役立つと思うので、ぜひ活用してください!
その他:注意事項
紹介する参考曲は、公式の楽譜を確認していません。
大半は 僕の耳で「多分こうなっているだろう」と推測・解釈したものです。
もしかしたら間違っている可能性もあるので、ご了承ください。
もし、誤りを発見された際は、コンタクトフォームよりお知らせください。
※僕は短調のダイアトニックコードも、その平行調の長調のディグリーで考えています。
たとえば、CメジャーキーでもAマイナーキーでも、AmコードはⅥmとしています。
※僕は転調を”調号の数の変化“で分類しています。詳しくは、こちらの記事やこちらの動画をご覧ください。
①転調する直前にドミナント機能を持つコードを置く
まずは、基本的な方法から紹介します。
転調前に、ドミナントの機能を持つコードを鳴らす発想です。
“ドミナント機能を持つコード”の探し方
“ドミナント機能を持つコード“を探すためには、五度圏↓を使うと便利です。
一番基本的な“ドミナント機能を持つコード”は、解決したい和音のルートから“時計回りに1つ進んだ位置にある音 をルートにしたドミナント・セブンコード“になります。
たとえば、Cへ解決するコードを探したい場合は、Cから時計回りに一つ進んだ場所を見ればいいので…
Cへ解決するドミナント機能を持つコードは、”G7※”ですね。
※ここではオーソドックスなドミナント・セブンコード(Ⅴ7)で話を進めます。7thの音の省略などはお好みで。
むしろ、実際の曲(特に最近のポップス)ではⅤ7ではなく、ⅤやⅣ/Ⅴの方が登場回数が多い気がします。
さらに言えば
- D♭7:(裏コード)
- E7:(Aマイナーキー(Cメジャーの平行調)へのドミナント)
- B♭7:(E7の裏コード)
も”ドミナント機能を持つコード“として使えます。
つまり、(転調先から見て)Ⅴ7、Ⅲ7、♭Ⅱ7、♭Ⅶ7です。
これらのコードをまとめてドミナント・アクシスと呼んだりもできます。
より深く知りたい人は「中心軸システム」あたりで調べてみてください。
【ドミナントを調べる】
〇へのドミナント・アクシスは…
もちろん、前後の流れを考えて更にツーファイブ(Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ)や、Vsus4→VみたいにしてもOKですし、Ⅳm/Ⅴみたいな代理コードに変形してもOKです。
【ツーファイブを調べる】
ディグリーネーム表記が苦手な方は、こちらのページ↓もご活用ください。
代理コードに関しては、別途詳しくまとめた記事↓があるので良ければどうぞ
そして、この転調前にドミナントの機能を持つコードを鳴らす発想には
①転調後のキーから考える
②転調前のキーから考える
③適当
この3つの視点があります。
順番に解説していきます。
①転調後のキーから考える
「今いる(転調前の)キーがどこか」は一旦置いといて…
転調する直前に、行きたい場所に解決する”ドミナント機能を持つコード“を置く。
簡単に言えば、それだけです。
たとえば、Cメジャーキーへ転調したい場合、
こんな感じで、直前に”G7“(及びその代理コード類)を鳴らせばOKです。
ヨルシカ – 雨とカプチーノ
サビでG#マイナーキー(#×5)からD#マイナーキー(#×6)へ#+1の転調をしています。
転調する直前「さぁ」の部分で、
D#マイナーキー(#×6)へのドミナント機能を持つ”A#7“(転調後から見てⅢ7)が鳴っています。
②転調前のキーから考える
次は、転調する前のキーの視点で考えます。
…といっても、基本的な流れは一緒です。
先ほどとは逆に
転調先のキーのことは考えずに、今いるキーのドミナントコードを転調前に置きます。
これだけです。
たとえば、今度は転調前のキーがCメジャーキーとしましょう。
…この場合、”G7“を転調前に置けばOKです。
イメージとしては…
こんな感じ。
そして、こちらも同じくドミナントの部分を代理コードや、ツーファイブに変形してOKです。
冨田ラボ – アタタカイ雨 feat. 田中拡邦
イントロはBメジャーキー(#×5)で始まり、AメロでA♭メジャーキー(♭×4)へ#+3の転調しています。
転調する直前のコード進行は
遠い記憶が…
F#sus4 → F# (本来はBへのドミナント) → A♭
みたいな感じです。
F#の次に、B(トニック)に行く…と見せかけてA♭メジャーキーへ行っています。
だから、転調する前のキーのドミナントを転調前に置いても大丈夫です。
①と②の合体
①と②を合わせた発想の転調も考えられます。
Aimer – 蝶々結び
この曲は、サビでCメジャーキー(#・♭×0)から、F#マイナーキー(#×3)へ#+3の転調をします。
転調するときのコード進行が
…をーーーこめてーーー はねは 大きくーー
Gsus4 → G → C# ー転調→ F#m7
みたいな感じなんですけど
GはCメジャーキーのドミナント、C#はF#マイナーキーのドミナントです。
だから、連結して使うのもOKです。
嵐のLove so sweetも、このパターンで解釈できますね。
嵐 – Love so sweet
詳しくはこちらの記事で↓
③ぶっちゃけ、適当にドミナントコードを置くだけでいい
ぶっちゃけると…
「適当にドミナント機能を持つコードを転調前に置くだけでいい」とも考えられます。
「噓だろ?」と思うかもしれません。でも、マジです。笑
そもそも、①と②の発想を組み合わせた時点で、かなりの選択肢がありましたね。
それに加えて、キーのトニック以外のコードへ解決するドミナント・セブンコードも考えてみましょう。
「セカンダリー・ドミナント」ってやつです。
たとえば、Cメジャーキーのダイアトニックコードを見てみましょう。
まず、”C“へ解決するドミナント・セブンコードは”G7“(Ⅴ7)、裏コードは”D♭7“(♭Ⅱ7)でしたね。
五度圏を見ながら、さっきの要領でセカンダリー・ドミナントを考えると
“Dm“へは ”A7“、裏コードは”E♭7“ (Ⅵ7,♭Ⅲ7)
“Em“へは ”B7“、裏コードは”F7“ (Ⅶ7,Ⅳ7)
“F“へは ”C7“、裏コードは”G♭7“ (Ⅰ7,♭Ⅴ7)
“G“へは ”D7“、裏コードは”A♭7“ (Ⅱ7,♭Ⅵ7)
“Am“へは ”E7“、裏コードは”B♭7“ (Ⅲ7,♭Ⅶ7)
と なります。
(※通常、Bm(♭5)(Ⅶm(♭5))へのセカンダリー・ドミナントは想定されません。)
…お気づきでしょうか。
12個のドミナント・セブンコードが全て網羅されている と。
したがって、ドミナント機能を持つコードを転調前に適当に置くだけで、使用者が意識しなくても何らかの「Cメジャーキーへ行く理屈」はつくわけです。笑
(さらに、ドミナント・セブンコードを代理コードにしてもOKです。)
もちろん、他のキーでも同じです。
つまり、前後の流れを考えなければ(むしろ「考えれば」?)ドミナント機能を持つコードを鳴らしておけば、その後どこへ転調しても大丈夫です。
こちらのページ↓では、”指定した音の組み合わせがドミナント機能を持つかどうか”と、”その解決先”を調べられます。
②Phrase modulation(フレーズ モジュレーション)
フレーズ・モジュレーションは、転調前のフレーズが一旦、元のキーのケーデンスで終わり、次のフレーズが移動先のキーで始まる転調です。
???????
よく分からない?
つまり、「転調前に一旦、トニック(主和音)に戻ったら、その後はどこにでも行き放題だよ~!」ってことです。
イメージ的には
こんな感じで「起立!礼!…して一区切りした後はどこでも行ってOK!」みたいな。笑
いかつい名前ですが、内容は簡単です。
UVERworld – Fight For Liberty
Cマイナーキー(♭×3)から、サビでE♭マイナーキー(♭×6)へ♭+3の転調するこの曲。
サビ前の「生きるという全てのanswer」で、Cm(トニック)に解決してから転調します。
aiko – 青空
最初はF#メジャーキー(#×6)で曲が始まります。
そして、Aメロの最後「…知ってしまったん”だ“」でF#(トニック)に解決します。
その直後に、半音上のGメジャーキー(#×1)へ♭+5の転調をして間奏に入ります。
ツミキ – ヒウマノイドズヒウマニズム
Aメロ最後の「今 何処だ だ だ」の部分のピッチがB♭(転調前のトニック)です。
そして、BメロでB♭マイナーキー(♭×5)からC#マイナーキー(#×4)へ♭+3の転調をします。
③Common-chord modulation(コモン コード モジュレーション)
※Diatonic-pivot-chord modulation(ダイアトニック ピボット コード モジュレーション)とも。
近親調であれば、転調前と転調後のダイアトニックコードに共通する和音があります。
コモン・コード・モジュレーションは、その共通する和音(ピボット・コード)を足掛かりに転調する方法です。
イメージとしてはこんな感じ。
このように両キーに共通する和音を使えば、スムーズに転調できるわけです。
田中昌之 – 仮面ライダークウガ!
AメロがAマイナーキー(#・♭×0)、BメロでEマイナーキー(#×1)に#+1の転調をします。
転調して最初に鳴るEmコードは、
Aマイナーキーにも共通するダイアトニックコードなので違和感が少ないですよね。
…さて。
基本的にピボット・コードを使った転調はダイアトニックコード内で共通する和音を考えます。
しかし、拡大解釈して応用すると、こんなこと↓もできます。
Dream Theater – Beyond This Life
2:26あたりで、G#マイナーキー(#×5)から最も離れたDマイナーキー(♭×1)へ転調しています。(#・♭+6の転調)
五度圏の対極にある最も離れたキー同士なので、
ダイアトニックコードのみで考えると”共通する和音は1つも無い“です。笑
コード進行はこんな感じ。
~A sad close to a broken love affair
C#m → E →E♭ → F → E♭/G → A/C# ー転調→ Dm
転調前からの視点
Ⅱm → Ⅳ → Ⅲ → #Ⅳ → Ⅲ/#Ⅴ → ♭Ⅶ/Ⅱ ー転調→ ♭Ⅲm
転調後からの視点
#Ⅴm → Ⅶ → ♭Ⅶ → Ⅰ → ♭Ⅶ/Ⅱ → Ⅲ/#Ⅴ ー転調→ Ⅵm
色々な工夫がされているコード進行ですが、ポイントはE♭だと思います。
ドミナント・アクシス(Ⅴ7、Ⅲ7、♭Ⅱ7、♭Ⅶ7)視点を取り入れると
E♭メジャーコードは、G#のⅢであり、Dmの♭Ⅶで、
どちらのキーに対してもドミナント機能を持つ和音です。
したがって、恐らくピボット・コード的発想で転調していると考えられます。
④Common-tone modulation(コモン トーン モジュレーション)
コモン・トーン・モジュレーションは、転調の前後でメロディが同じ音を鳴らしている転調です。
修二と彰 – 青春アミーゴ
サビでGマイナーキー(♭×2)から半音上のG#マイナーキー(#×5)へ♭+5の転調をします。
転調する前後の「電話が切れた」と「SI 俺たちは」の音はどちらもD#/E♭です。
移動ドで考えると「D#/E♭」は
転調前では「ファ」、転調後では「ミ」にあたる音になります。
同じ「D#/E♭」にも関わらず、かなり印象が変わりますね。
Official髭男dism – Cry Baby
サビでDマイナーキー(♭×1)からDメジャーキー(#×2)へ#+3の転調しています。
こちらも転調の前後の音が固定ドで見て同じです。
移動ドで考えると「G」は
転調前では「レ」、転調後では「ファ」にあたる音になります。
⑤Sequenz(ゼクエンツ)
ゼクエンツは、特定のモチーフの高さをズラしながら反復する手法です。
反復進行とも呼ばれます。
スケール内の音に合わせてズラす場合と、
スケール関係なくそのままズラす場合があります。
スケール関係なくズラすと、簡単に転調ができます。
KHUFRUDAMO NOTES – NEXUS
拙作。1:46あたりから、反復進行を使って2連続で♭+3の転調をしています。
※Eマイナーキー(#×1)→Gマイナーキー(♭×2)→B♭マイナーキー(♭×5)
この曲は他にも転調しまくりなので、個別の記事があります。
Linked Horizon – 紅蓮の弓矢
Aメロ手前のコーラス部分で、反復進行を使った転調が行われています。
C#マイナーキー(#×4)→Eマイナーキー(#×1) →AメロでG#マイナーキー(#×5)へ※
※Aメロに入る直前の部分はゼクエンツではありません。ドミナントコードを直前に配置する発想の転調と思われます。
平行和音(コンスタント・ストラクチャー)
たとえば、Cm→Em→Dm→F#mのように
同じ種類のコードをズラして連結する、ゼクエンツとほぼ同じ発想です。
こちらの考えでも簡単にキー外の音を取り入れられるので、転調に応用できます。
米津玄師 – Pale Blue
Aメロに入るときに「♭+2の転調」をしています。
Aメロ冒頭の和音は「CMaj7」、直前の和音は「DMaj7」で、どちらもMaj7コードの響きになります。
⑥Sequential modulation(シーケンシャル モジュレーション)
シーケンシャル・モジュレーションは、前述のゼクエンツとほぼ同じ発想です。
同じフレーズをそのままズラす手法で、よく“ラスサビ転調“で使われます。
バルーン – メーベル
ラスサビで半音上のキーへ♭+5の転調をしています。
Cマイナーキー(♭×3)→C#マイナーキー(♯×4)
このようにラスサビは、半音上のキーへ転調(♭+5の転調)がよく使われます。
しかし、必ずしも半音上のキーへ転調する必要はありません。
Tempalay – 大東京万博
ラスサビで半音上に転調と思いきや、半音下のキーへ転調(#+5の転調)パターン。
Dメジャーキー(#×2)→D♭メジャーキー(♭×5)
BTS – Dynamite
最後のサビで半音上に転調と思いきや、全音上のキーへ転調(#+2の転調)パターン。
Eメジャーキー(#×4)→F#メジャーキー(#×6)
YOASOBI – 夜に駆ける
ラスサビで半音上に転調と思いきや、短3度上のキーへ転調(♭+3の転調)パターン。
Bマイナーキー(#×2)→Dマイナーキー(♭×1)
millennium parade – FAMILIA
ラスサビで半音上に転調と思いきや、長3度上のキーへ転調(#+4の転調)パターン。
D♭メジャーキー(♭×5)→Fメジャーキー(♭×1)
⑦Parallel key modulation(パラレルキー モジュレーション)
パラレルキー・モジュレーションは、同主調を行き来する転調です。
※”Parallel“は「平行」を意味します。しかし、”Parallel key“は「平行調」ではなく「同主調」です。(ややこしい)
同主調は、同じ主音(トニック)を持つ関係の長調と短調です。
※例:Cメジャーキー(#・♭×0)とCマイナーキー(♭×3)など
そして、この長調と短調を主に決定しているのは、ルート音から見て3度の音※です。
※CメジャーキーとCマイナーキーの場合、EとE♭の音
つまり、3度の音の使い方を工夫すると、同主調は比較的スムーズに行き来できます。
したがって、この方法が使えるのは基本的に#+3の転調か♭+3の転調になります。
LiSA – 炎
17:23あたりからLiSAさんの『炎』での使われ方を、楽譜ありで解説しています。↑
どうぶつビスケッツ×PPP – ようこそジャパリパークへ
Fメジャーキー(♭×1)から始まり、Aメロで並行調のFマイナーキー(♭×4)に♭+3の転調をし、BメロでまたFメジャーキー(♭×1)に#+3の転調で戻ります。
僕の耳が正しければ、Aメロ最初のキメは3度の音を抜いたF5(パワーコード)になっています。
つまり、メロディの「たからかに」のA♭の音によってFマイナーキーを示唆しています。
メロディやコードの流れが巧みなので、違和感なく聴けますね。
坂本真綾 – プラチナ
Aメロの中で、Dメジャーキー(#×2)とDマイナーキー(♭×1)を行き来しています。
ちなみに、この曲はピポッド・コードとゼクエンツを併用した発想と思われるBメロの転調も滑らかで美しいです。
また、冒頭のサビと、Bメロ後のサビのキーが違う点にも注目です。
パラレルキー・モジュレーションの応用編
ちなみに、同主調の概念にモード(旋法)も含めると、さらに多彩な転調が可能です。
LiSA-白銀
サビでD#マイナーキー(#×6)と、E♭ドリアンモード(♭×5)を行き来しています。
この曲の場合、すぐ帰ってくるのでモーダル・インターチェンジと解釈される方もいるかもしれませんけど。
「D#」と「E♭」は、異名同音なので同じ音です。
⑧ブレイク、ノイズ、ドラムフィルなどを入れる
コードを使った発想からの脱却。
非和声的な音で流れをぶった切った後は、どこへでも行き放題です。
majiko – エスカルゴ
サビでG#マイナーキー(#×5)からE♭マイナーキー(♭×6)へ#+1の転調。
サビ転調前に一瞬、話し声っぽいサンプルが挿入されています。
このように音高が感じ取りづらい音で前後の流れを断ち切って転調する発想です。
菅野祐悟 – il vento d’oro
3:42あたりでノイズを鳴らしたセクションを挟んで、曲調をガラッと変えています。
(※ただ、この曲は転調しているわけでないです。)
⑨何でもいい
ここまでくると薄々気付いてきている方も居るかと思いますが…
正直、最終的には転調前にどのコードを置くかとか 何でも良いんです。
どうやろうが、やりようによっては何とかなります。笑
Travis Scott – SICKO MODE ft. Drake
1:01あたりに、突如としてGマイナーキー(♭×2)から半音下のF#マイナーキー(#×3)へ#+5の転調をします。
ラップがDrakeからTravis Scottのパートに交代する部分とはいえ、キーもビートもガラリと変わっており、まるで違う曲になったようです。
Mattias ‘IA’ Eklundh – The Road Less Traveled
1:56あたりでGマイナーキー(♭×2)からいきなりB♭リディアン(♭×1)になり、そしてAマイナーキー(♯・♭×0)へ転調します。
こういうのを聴いても、大体なんでもOKな気がしてきますよね。笑
※一応、真面目に解釈すると、調号で見ると、Gマイナーキー(♭×2)→B♭リディアン(♭×1)→Aマイナーキー(♯・♭×0)となるので、#+1の転調を連続で行ったのではないかと考えられます。
また、Gマイナーキー(♭×2)→B♭リディアン(♭×1)の移動は、Gマイナーキー(♭×2)の平行調(B♭メジャーキー(♭×2))へ行くと見せかけて同じ主音のリディアンに行っているとも考えられそうです。
⑩調性は濃淡でしかない。初めからそんなものは無い。
発想の転換です。
“調性”自体が幻想だと思えば、我々を縛るものはもう何もありません。
ヨーロッパの民族音楽(クラシック)のシステムに骨の髄まで支配される必要は無いです。
……と…まぁ、半分冗談ですけど。笑
最終的にはどんな手法もやってみていい感じだったらOK! ってことです。
その他:面白いアイデアの転調
ここで、更にひとつ面白い転調のアイディアを紹介したいと思います。
田中秀和 – 花ハ踊レヤいろはにほ
この曲の最初のサビ(0:01~)のキーは、A♭メジャー(♭×4)です。
一方、メインのサビ(0:51~)はE♭メジャーキー(♭×3)です。
つまり、メインのサビは最初サビに対して#+1の転調した格好です。
しかし、この曲が面白いのは両方のサビのメロディが”固定ド“で同じなのです。
最初のサビとメインのサビ
なぜこんなギミックが可能なのでしょうか。
答えは、「このメロディがペンタトニックスケールを使っており、ペンタトニックスケールは、そのキーに対する属調や下属調と共通の構成音を持つから」です。
たとえば、Cメジャーペンタトニックスケールの場合…
どちらのキーにも”ドレミソラ“の音が含まれていますよね。
つまり、「パーッとパーッと晴れやかに」の部分は
固定ド視点:C→B♭→C→B♭→G→B♭→G→F→G
移動ド
A♭メジャーキー視点:ミ→レ→ミ→レ→シ→レ→シ→ラ→シ
移動ド
E♭メジャーキー視点:ラ→ソ→ラ→ソ→ミ→ソ→ミ→レ→ミ
となります。
この曲は、このペンタトニックスケールの性質を利用して、
冒頭(Key=A♭)のサビメロディと、
属調(Key=E♭)に転調した後のサビメロディを“固定ドで見て同じ“にしているわけです。
「転調って色々工夫ができるなぁ…」と感じる1曲ですね。
まとめ
さて、色々な方法を見てきました。
しかし、解釈は一通りではないので、紹介したものが全てではありません。
また、紹介した「転調のやり方」は、
特定の視点に着目して転調を紹介しているに過ぎず、どれも完全に独立した発想・方法ではありません。
たとえば…
Klang Ruler – タイミング 〜Timing〜 (Cover)
こちらの楽曲は、サビでCマイナーキー(♭×3)からD#マイナーキー(#×6)へ♭+3の転調をしています。
転調前に話し声っぽいものが挿入されているので、「⑧ブレイク、ノイズ、ドラムフィルなどを入れる手法」が用いられていると言えます。
しかし、その直前のコードは、G(Ⅲ(転調前のキーのドミナント))です。
つまり、基本的な転調の考え方である「①転調する直前にドミナント機能を持つコードを置く(転調前のキーから考える)」も、しっかり押さえていると分かります。
このように、色々な手法を組み合わせて転調のアイデアを考えてみてください!
そして、引き出しを増やすには転調している曲の分析をオススメします。
その際には、「転調の間隔」が簡単に調べられるウェブアプリや、
転調しまくる曲をまとめた記事、
自分用にちょくちょく更新している「転調している曲」のSpotifyとYouTubeのプレイリスト、
みんなで使える「転調している曲データベース」など公開しているので、活用してみてください。
では!(๑˃̵ᴗ˂̵)و