【代理コードの考え方】アッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)やハイブリッド・コードを理解しよう

音楽理論・DTM関連
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アッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)やハイブリッド・コードって難しそうなイメージがありますよね。

たしかに、最初はとっつきにくいかもしれません。

しかし、代理コードの考え方を理解すれば、USTハイブリッド・コードへの理解も深まるはずです。

今回は代理コードの考え方と絡めて、USTハイブリッド・コードの解説をしていきます。

最後に厳選したオススメのコード紹介もあります!

では、いってみよう!(๑˃̵ᴗ˂̵)و

代理コードとは?

代理コード」とは、コードとしての機能が同じで(メロディや曲想が許す限り)入れ替えても差し支えが無いコードです。

↑※コレはわりと極端な例ですけど。

代理コードの考え方

一番シンプルな代理コードの考え方は、「構成音が似ているコードを探す」です。

たとえば

C“(ド・ミ・ソ)に対して、共通の構成音を持つ”Em“(ミ・ソ・シ)は代理コードとして使える…といった具合です。

 

でも…「構成音は似ているけど、あんまり上手くハマらないコードもあるよね…?」と感じるときがありませんか?

 

その疑問を解消するには、ただ単に”構成音が似たコードを考える”のではなく、もう一歩踏み込んだ代理コードの考え方をする必要があります。 

その考え方とは、「コードの背後にあるキーとモードを意識する」です。

コードの背後にあるキーとモードを意識する

コードの機能は、想定されるキー(親スケール)によって大きく変わります。

たとえば、”C“(ド・ミ・ソ)のコードは

 

Cメジャーキー(#・♭×0)ではトニック(Ⅰ)

Gメジャーキー(#×1)ではサブドミナント(Ⅳ)、

Fメジャーキー(♭×1)ではドミナント(Ⅴ)

としての機能を持ちます。

つまり、同じ”C“(ド・ミ・ソ)の響きでも背後に存在するキー(親スケール)が違えば、役割や立ち位置が変わるわけです。

  

たとえば、「□肉□食」の”□”に入る文字を考えてみると…

  • 弱肉強食
  • 焼肉定食

などの複数の意味の違う熟語が想定できますよね。

 

これを音楽で捉え直すと

ド□ミ□ソ□□」(コード)の背後には

  • ドレミファソラシ…(Cメジャースケール:Cアイオニアンモード)
  • ドレミファ#ソラシ…(Gメジャースケール:Cリディアンモード)
  • ドレミファソラシ♭…(Fメジャースケール:Cミクソリディアンモード)

などの複数の役割が違うスケールが想定できるイメージです。

したがって、正確に代理コードを考えるためには、まずその和音がどんな役割で鳴っているかを想定する必要があります。

ちなみに、”C“の背後に想定できるモードをさらに詳しく整理するとこんな感じ↓になります。

↓こちらでキーやコードを切り替えて確認できます。

コード(100種類以上)の構成音を調べる O-TO【音楽理論ウェブアプリ】
100種類以上のコードの構成音や情報を、全てのルート音で調べられるアプリです。同時に、指定したコードの構成音を含む主なスケールと、ネガティヴ・ハーモニー理論に基づく代理コードも表示されます。

主要なスケールの子モードに絞って整理しても、色々な可能性がありますね。

モードの構成音は「親スケールのダイアトニックコード+テンション」

ここまでの内容をふまえると…モードの構成音は、「親スケールのダイアトニックコードテンション」とイコールの関係であると分かります。

通常はコードの背後にあるモードから全ての音を鳴らさないので、意識しないかもしれません。

しかし、代理コードを考える時は、このコードの背後に存在する親スケールとモードへの視点が大切になります。

 

だから、構成音が似ているコードでも、背後にある親スケールやモードに意図しない音が混ざっていると「あんまり上手くハマらない」状態になりやすいのです。

 

ちなみに、逆にコードが共通する点を利用して転調やモードチェンジもできます。

詳しくはこちらの記事コモン・コード・モジュレーションの項目をご覧ください。

モードの構成音からいくつかの音を選ぶ

さて。

代理コードのキー(親スケール)とモードを把握したら、モードの構成音から代理コードを考えます。

ここでは”C“が、Cメジャーキーの第1モード”Cアイオニアンモード“由来だった場合を例に考えてみましょう。

 

Cアイオニアンモード“の構成音は

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」です。

この7音を使って、代理コードを考えます。

ただ、一応制限を設けないとかなりの数が想定できるので…

  • 代理する前のコードのルート音を含む

または

  • 代理する前のコードの構成音を2音以上含む

を条件とします。

(つまり、”C“の場合はドのみ、ドとミ、ドとソ、ミとソはOK。 ミのみ、ソのみ、いずれの音も含まないコードは避ける

すると…こうなります。

含まれる度数
コードネーム
9th
M3rd
11th
P5th
13th
M7th
備考
アボイド
1/3/5/7/9/11/13C△7(9,11,13)DEFGABあり
1/3/5/7/9/11C△7(9,11)DEFGAⅦm(♭5)/Ⅰあり
1/3/5/9/11/13Dm/CDEFGAⅡm/Ⅰあり
1/3/5/11Cadd11EFGあり
1/3/5/9/13Cadd9,13DEGAC6/9と同じ
1/3/5/7/9C△9DEGB
3/5/7/9Em7DEGB根音省略
1/3/5/9Cadd9DEG
1/3/5/13Cadd13EGAC6と同じ
3/5/7EmEGB根音省略
1/3/5CEG
1/5/7/9/11G7/CDFGB
1/5/9/11Csus2,4DFG
1/5/11/13Cadd11,13(omit3)FGAあり
1/5/11Csus4FGあり
1/5/7/9G/CDGBⅤ/Ⅰ
1/5/9Csus2DG
1/5/7/13C△7add13(omit3)GAB
1/5C5Gパワーコード
1/3/9/11Cadd9,11(omit5)DEFあり
1/3/7/9C△9(omit5)DEB
1/3/13Am/CEAAmの転回形
1/3/7C△7(omit5)EB
1/3C(omit5)E
1/7/9/11/13Bm(♭5)7/CDFAB
1/9/11/13Dm/CDFAⅡm/Ⅰ
1/7/9/11Bm(♭5)/CDFB
1/11/13F/CFAFの転回形

これらのコードが「Cアイオニアンモード“由来の”C“の代理コード」にできそうなコードです。

さらに言えば、これらのコードの転回形も選択肢に含まれます。笑

 

もちろん、メロディとの兼ね合いを考えると使いどころが難しそうなコードもあります。

アイオニアンモードの場合、11thはM3rdはアボイドノートになるので通常は選択肢から外れます。
ただ、他のモードの場合は11thを使える場合もあるので、11thが入ったボイシングも考えました。

いやー…眺めてみると、なかなかの数ですね。笑

USTとハイブリッド・コードの正体

さて。先ほどの代理コードの一覧表には、”分数コード“がいくつかありました。

あの”分数コード“たちこそが、USTハイブリッド・コードの正体です。

※分数コードについて詳しくはこちら

つまり、USTハイブリッド・コード

「テンションを含んだコード」の構成音分かりやすく示すための書き方です。

 

たとえば、同じ構成音のコードでも

G7(omit3,5)add♭9,11」や「Fmadd9/G

より

Fm/G」と書かれていた方が「ソ・ファ・ラ♭・ド」だと分かりやすいはずです。

 

ただ、構成音が分かりやすい反面、コードの背後にあるキーやモードがパッと見で分かりづらいので”特殊なヤツ感“が出てしまっているのだと思います。

【UST ハイブリッド・コードのポイント】
  • 普通のトライアド(3和音)や4和音と同じくコードの背後にキーとモードが想定される。
  • テンションを含むコードの構成音を分かりやすく書くための手法である。

オススメのUSTとハイブリッド・コード

なんとなくUSTハイブリッド・コードのイメージを掴めたでしょうか?

 

…ただ、ここまで読んだ内容通りにUSTハイブリッド・コードを考えると、多くのコードが想定できます。

いちいち考えるのは面倒くさいし、組み合わせを覚えるのも大変!」と言いたくなる方も多いはずです。

 

しかし、実は”汎用性が高く気軽に使えるコード” に絞ると、そう多くはないです。

そこで、僕から厳選したオススメのUST or ハイブリッド・コード3つ紹介します!!

たった3種類とはいえ、巷で見かけるオシャレ分数コードは、概ねこの3種類の亜種な気がします。

…ちなみに、USTだと響きが重くなるので、基本的にはハイブリッド・コードとして使うのがオススメです。

※分数コードをそれ単体でローマ数字で表すときは、分母は「」に固定して表す場合が多いです。
以下で紹介する①~③のコードも、そう表記しています。

①♭Ⅶ/Ⅰ

ベース音に、全音下をルート音にしたメジャートライアドを乗せたコード。

フュージョンで多用されるので、「フュージョン・コード」とも呼ばれる分数コードです。

トライトーンを含みませんが、ドミナントコードの代理コードとして使えます。

コード上では主に、メジャースケールの第5モード ミクソリディアンモードやメロディックマイナーの第5モード ミクソリディアン♭6thモードが使えます。

例:
代理前:C → G7 → C
代理後:C → F/G → C

②♭Ⅶm/Ⅰ

先ほどのフュージョン・コードの分子のトライアドをマイナーにしたコード。

こちらもドミナントの代理コードとして使いやすいはずです。

ハーモニックメジャーの第5モードのミクソリディアン♭2ndや、ハーモニックマイナーの第5モードフリジアン・ドミナント(HmP5↓)由来の♭9thの響きが欲しい時に使えます。

例:
代理前:Dm7 → G7 → C
代理後:Dm7 → Fm/G → C

③♭Ⅶaug/Ⅰ

フュージョン・コードの分子にあるトライアドをオーギュメントにしたコード。

ブラックアダーコード(blk)」や、「イキスギコード」とも呼ばれます。

#11thは刺激的なサウンドになりやすく、乱発できないケースもあります。
しかし、機能的には小回りが利くので使いやすいコードです。

メロディックマイナーの第4モード リディアン♭7th由来なら、ドミナントの代理

例:
代理前:C → D7 → G7 → C
代理後:C → Caug/D → G7 → C

メロディックマイナーの第6モード ロクリアン♮2nd由来なら、トニックの代理

例:
代理前:C → G7 → C
代理後:G#aug/F# → G7 → C

ハーモニックマイナーの第4モード ドリアン#4thやハーモニックマイナーの第6モード リディアン#2nd由来なら、サブドミナントの代理としても使えそうです。

例:
Dm7 → Em7 → F△7 → G → C
Caug/D → Em7 → E♭aug/F → G → C

星野源 – うちで踊ろう

たとえば、星野源さんの「うちで踊ろう」にも「♭Ⅶaug/Ⅰ」は何度か登場します。

楽譜には「7#11th」と書かれています。

ご本人はリディアン♭7th由来のコードとして解釈している可能性が高そうですね。

しかし、ギターのボイシング的に「♭Ⅶaug/Ⅰ」と捉えても問題ないはずです。

とりあえずルートの全音下のトライアドを乗っける

要するに、3種類のコードとも、ベース音に対して全音下(♭Ⅶ)のトライアドを乗せているだけです。

でも、結局簡単に使うならこの「全音下(♭Ⅶ)のトライアド乗せ」が便利なんですよ。笑

したがって、手軽にUSTやハイブリッド・コードを使いたければ「”ドミナントコード“の”ベース音”に対して全音下(♭Ⅶ)のトライアド“を乗せた分数コードに代理する」と考えるだけでも良いかもしれません。

今回のポイントのまとめ

  • 代理コードを考えるときはコードの背後にあるキー(親スケール)とモードを意識する
  • モードの構成音は「親スケールのダイアトニックコードテンション」で捉える。
  • 手軽なハイブリッド・コードの使い方は「ルートの全音下のトライアドを乗っける。

そんなわけで、今回は代理コードの考え方と絡めてアッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)ハイブリッド・コードの解説をしてみました。

少し難しい内容だったかもしれません。

しかし、楽器を手にとってサウンドを確認すると更に理解が深まるはずです!(๑˃̵ᴗ˂̵)و

では!

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