Dream Theaterの新しいアルバム『A View From The Top Of The World』を聴いたので、感想を書いていきたいと思います。
はじめに
アルバム配信開始直後(2021年10月22日)に書いています。
先行シングルの『The Alien』と『Invisible Monster』以外は、数回ずつ聴いた感想になっています。
(※後日、若干 加筆修正しました。)
全体的な感想
アルバムの方向性
前作の『Distance Over Time』に引き続き、”Dream Theaterらしい要素“をDream Theater本人たちが再構築する方向性を感じました。
この方向性には、「真新しさがない」みたいな意見もあるみたいです。
しかし、これだけキャリアが長いバンドだと、「手当たり次第に新しい要素を取り入れるよりも、過去の遺産と向き合って昇華させていく方が良いのではないか」と思います。
(実際に、新しいことをたくさんやっていた『The Astonishing』はちょっと微妙だった気もしますし。)
また、僕がDream Theaterに求めているのは、結局”Dream Theaterらしさ“だったりするので、そういう意味でもこの路線は結構好きです。
アルバムの音作り
個別のサウンドは「流石、良い音だな~」と感じるものが多かったです。
特にベースとキーボードの音作りは、好みのものがたくさんありました。
しかし、全体的なミックスは、悪くない…むしろ良いものの…「前作の『Distance Over Time』 の方が好きだったかな…」と思います。
特に、バスドラムのサウンドですね。
ところどころアタックがベチベチし過ぎているというか…いかにもメタルっぽいミックスのアプローチと言えばそうなんですけど…それ自体があまり好みではないんですよね。
各曲の感想
01.The Alien
アルバムからの先行シングル。17拍子(5+5+7)を主体にした曲ですね。
とにかく、ドラムパートが凄い。
The Alienのドラムパートについて
マイク・マンジーニは、高いテクニックと音楽への理解力を持った世界最高峰のドラマーの1人でしょう。
実際に、加入直後の『A Dramatic Turn Of Events』からDream Theaterのドラムパート難易度は、爆上がりしました。
ただ、ドラマー視点で見ると、マンジーニの素晴らしさはテクニックのみならずフレーズの構築能力にあると思います。
なぜなら、超絶テクニカルなプレイでも「あくまで“Dream Theaterの曲に対して音楽的であるか”を優先したフレーズになっている」と感じるからです。
実際に、過去のインタビューでも
僕にとって大切なのは “いかに音楽的であるか” ということだ。
リズム&ドラムマガジン 2011年 11月号
ドラマーとして、他の人が最高に輝いている瞬間の邪魔は絶対にしたくない。
リズム&ドラムマガジン 2011年 11月号
みたいな発言をしています。
その姿勢は、現在でも変わっているとは思いません。
しかし、The Alienには今までよりも色濃くマンジーニのプレイスタイルが反映されています。
つまり、従来の「Dream Theaterの曲に対して、マンジーニが適切なアプローチをする」状態から、「マンジーニのアイディアを、Dream Theaterが曲としてまとめあげた」状態になっている印象を感じました。
マンジーニのバンド加入から約10年。
やっと、「マンジーニの真価を引き出した曲が生まれたのかな…」
…と思いきや、マンジーニ先生によるプレイスルー。
原曲の110%の速さで叩いています。
まだまだ底が見えません…笑
02.Answering The Call
イントロから印象的なリフが!(拍子は、おそらく7+7+7+5ですね。)
そして、ジョーダン・ルーデスのサウンドメイクが光ります!
この系統のフレーズめっちゃ好きなんですよね…。
インストパートは、『Systematic Chaos』時代を彷彿とさせます。
一通りソロ合戦をした後にユニゾンやハモリに移行する曲構成は、「ドリームシアター聴いている!」って感じで好きです。
アウトロの組み立て方は、ありそうで無かった感じ。これもカッコいい。
色々な要素がコンパクトにまとまっていて、かなり気に入りました!
(7分超えでコンパクトとは???)
03.Invisible Monster
イントロは、Hell’s Kitchenみがあるアルペジオから始まり、メインモチーフ(リフ)へ。
一瞬、「Overture 1928っぽいな」と感じましたけど、音色や音使い的にはルイージマンションのBGMがより近いかなと思います。笑
特に2:44あたり~がかなり好きで、昔好きだったゲーム『ディディーコング・レーシング』の雰囲気をほんのりと感じました。(どのコースの曲かは思い出せない…)
3:30あたりからのセクションでは、マンジーニ先生が地味に難しいライドシンバルのオスティナート・フレーズをやっています。
こういうフレーズは、ドラマーじゃないとヤバさが伝わらないんじゃないかと思います。笑
その後、ギターソロ後半(4:24あたり)からは若干の 『半沢直樹』成分を感じました。笑
04.Sleeping Giant
久々の10分超えの大作。イントロから怪しげな感じ…そしてヘヴィなリフ。
『Awake』時代の香りがします。
5:40あたりからはOctavariumっぽさが。
個人的なお気に入りは、ソロ合戦(6:50あたり~)と、アウトロのドラム(9:40あたり~)ですかね。
全体的には、今のところ「悪くないけど、他の曲の方が好きかな…」みたいに感じてしまいました。
たぶん、僕が比較的『Awake』路線が好みじゃない部分が大きいかなと思います。
05.Transcending Time
中盤のギターソロ部分は結構ダークですけど、全体的には明るくポジティブな印象ですね。
Innocence Fadedや、Liquid Tension ExperimentのKindred Spirits的な雰囲気を感じました。
好きです。
ただ、若干パンチは足りない…かもしれません。
06.Awaken The Master
ついに、ジョン・ペトルーシが8弦ギターを使った楽曲のようです。
…イントロから明らかに低い音が鳴っている。笑
最初のリフの拍子は…おそらく、10 13 10 19…細かく取ると
4+3+3
4+3+3+3
4+3+3
4+3+3+3+3+3
みたいな感じでしょうか。
Awaken The Masterの8弦ギターの使い方について
6弦ギターと4弦ベース、7弦ギターと5弦(6弦)ベースの低音弦は、それぞれオクターブ上下の関係になっているので、同じリフをオクターブでユニゾンしやすいです。
しかし、8弦ギターは(ベースの音をこれ以上低くするのは難しいので)音域的にベースの帯域と被ってきます。
そのため、8弦ギターで7弦ギターの延長線上的な発想でフレーズを弾くとベースとモロ被りします。
反対に、ベースはベースで8弦ギターに合わせるには、本来出せる最低音よりは少し高い音を弾く必要があります。
結果的に、ギターとベース両方とも”あんまり美味しくない状態”になりやすいです。
(僕の曲にも8弦ギターを使ったやつがありますけど、ここらへんの兼ね合いをどうするかはいつも悩んでます。)
…とは言え、それはそれで“8弦ギター的なサウンド”なので必ずしも悪いとは思いません。
ただ、この曲はその“8弦ギター的なサウンド”だけで押し切ってしまった感があるので…、そこは、少し残念でした。
次回作では、また違った8弦ギターのアイディアを聴かせてくれるのを期待します。
07.A View From The Top Of The World
久しぶりの20分越えの曲。
イントロから早速、ホルストの火星などを想起させる仰々しい雰囲気を漂わせてきます。笑
たぶん、こんな感じで23拍子ですかね。
(細かくリズムを取るなら「3 + 4 + 5 + 3+3 + 3+2」とか…「3+3 + 3+3 + 3+3 + 3+2」とか色々な解釈ができそうなリズムになっていますね…)
1:03あたりからは15+8で取ると、取り易い気がします。
やっぱり、イントロが3分半もあってじわじわと盛り上がるのにはワクワクします。
普通のポップスなら1曲終わってますけどね。笑
4:30あたりから「See a view from the top of the world」と歌っているサビ(?)パート。
このメロディも、ドリームシアターのエモい感じのメロディの冒頭、だいたい(移動ドで)「ラ→シ→ド」始まり説に当てはまっていますね。笑
ただ、「ラ→シ→ド」は順次進行で使いやすいので、よく使っているのはドリームシアターに限った話ではないです。
5分過ぎ、テンポチェンジ(メトリック・モジュレーション?)した後のベースリフのサウンドがカッコいい…。
6:43から再びサビ。6:49あたりのドラムのリズム、ニヤッとしてしまいます。笑
7:24あたりからテクニカルめな間奏に突入。
The Dark Eternal Nightの4:00あたり~っぽいですね。
そして、9分あたりからはリラックスタイム。笑
しばらくギターのアルペジオが続き、途中から弦楽器っぽい音のソロが入ってきます。
ジョーダン・ルーデスのiPadアプリですかね?(生の弦ではない気がします。)
11分過ぎからのヴォーカルパートは、古き良きプログレ系の雰囲気。続く11:50~からは、エモい系ギターソロ。
14分あたり~、幻想的なピアノ→ドラムフィルで一気に雰囲気を変えてギターリフへ行く流れ。めちゃくちゃ好きです。その後の往年のメタルバンドみが溢れるギターリフやソロも好きです。
ギターとキーボードが一通り暴れた後、16:26あたりから、ちょっと古典派っぽいセクションが。
マイアングがインタビューで話してた所っぽいですね。好きです。
For instance, there is a classical Mozart-like section that happens in the second half of the song.
(例えば、曲の後半にはモーツァルトのような古典的なセクションがあります。)
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17分台のヴォーカルパートを聴きながら…「お、これはこのまま仰々しく終わってく流れ…!」と思いきや、18分過ぎあたりでガラッと雰囲気が変わってヘヴィなリフに。
アウトロは、そのまま思ったよりも仰々しさポイントを高めずに終了。
(それでも充分に仰々しい気もしますけど。笑)
A View From The Top Of The World(曲)の全体的な感想
今までの長編曲と比較して、「個々のリフやメロディのパンチ力は少し低い気もするけど、曲中でダレる場所も少ない」と感じました。
ただ、個人的には「中盤ヴォーカルパート→エモギターソロの流れはひと回しでもよかった感」と「最後の23拍子リフの代わりに、もう一度サビパートを仰々しめにやって欲しかった感」はあります。
まとめ
今のところ『Answering The Call』が一番気に入りました。
それから、個別の感想では若干ネガティブな内容も書きましたけど、いわゆる“捨て曲”は1曲も無かった気がします。
これからもっと聴き込んでいきたいと思います!\(^o^)/