スタジオジブリの新作映画『君たちはどう生きるか』を見てきたので感想を書きます。
ネタバレありです。
※1度見てまだ誰の感想も見ていない状態で書いたので、記憶違いや的外れな内容もあるかもしれません。
※小説『君たちはどう生きるか』は読んでいません。
では、いってみよう!(๑˃̵ᴗ˂̵)و
見に行くまで
「事前情報なし」というエンターテインメント
今回の映画には事前情報がほとんどありませんでした。
これはプロデューサーの鈴木敏夫さんが
「いろいろ考えているうちに一切宣伝がなかったら、皆さんどう思うんだろうと考えてみた。僕の考えですけど、これだけ情報があふれている時代、もしかしたら情報がないことがエンタテインメントになる。そんなふうに考えました。うまくいくかどうかわかりません。わからないけど、それを信じてやる、ということです」
https://natalie.mu/eiga/news/530619
との考えからそうなったらしいです。
…なるほど。
普通はあらすじや予告編を見た上で映画行きますもんね。
もちろん…ジブリだからできるパワープレイの側面もあるでしょう。
しかし、すごいのはこれを思いついて実行に移す胆力ですね。
いくらジブリほどのブランドがあったとしても、普通はできないと思うんです。
(実際、宮崎駿監督は不安なようですし笑)
「伊達にいくつもの映画をヒットさせてきた人じゃないな…」と思いました。
タイトルしか知らない状態で映画を見る
ということで。僕も鈴木プロデューサーの狙い通り見てきました!
「タイトルしか知らない状態で映画を見る体験はなかなか味わえない」と思いましたし。
たしかに、普通に宣伝されていたら「公開初日に行こう!」とは思わなかったかもしれません。
本編の内容と感想
ここからネタバレありです。
冒頭
冒頭は火事のシーンから。
事前情報がないので、「まずこの映画がどんな世界観なのか」に想いを巡らせながら見ていました。
…舞台設定は1944年、戦時中の日本?
…ということは…今回も『風立ちぬ』みたいな路線の映画なのかな…?
みたいに。
やはり、何も分からない中で映画を鑑賞する体験は面白かったです。
(それと相変わらず作画のクオリティがすごかったです。)
リアル路線かと思いきやファンタジー路線だった
主人公が疎開先で色々あって…みたいな部分までは「今回も『風立ちぬ』系リアル路線なのかな…」と思っていました。
しかし、アオサギ(ポスターに書かれていた謎のキャラクター)が出てきたあたりから「おや…これはファンタジー路線なのか…?」と思い始めてきました。
ただ、何度も非現実的なシーンの後に「…ハッ!夢か…!」演出が入ったので、しばらく「ファンタジーか!?違うのか!?…やっぱファンタジーなのか!?」みたいな感じでした。笑
…謎の洋館に入ったあたりで、完全に「ファンタジー路線なんだな」と確信しました。
そうだよ!この感じ!
洋館の中でアオサギと対決し、床に落ちていくあたりから「そう!宮崎駿作品ってこういう感じだったよな!」とじわじわと嬉しくなってきました。
予想できない場面転換、独特の世界観、キャラクター造形。
ある意味『崖の上のポニョ』以来の宮崎駿ファンタジーワールドを堪能できました。
「わらわら」の第一印象
_人人人人人人_
> auのpovo <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
メタファーについて
宮崎駿監督の作品は、表面的な絵の美しさやストーリーだけでなく、一段奥には色々なメタファーが仕込まれていて重層的にも楽しめると思います。
今作は特に、わりと抽象度高めな描写が多かったので、色々な解釈ができそうだなと思いました。
『君たちはどう生きるか』というタイトルだけあって「君たちはコレをどう解釈するか?」みたいな意図もあったのかもしれません。
ということで、僕が「もしかしたら…こうかも?」と思ったものを書いてみます。
アオサギのモデルはドラえもん?
主人公の名前は主人公は牧眞人(まき・まひと)です。
まず、黒板に書かれた名前を見て「韻踏んでる…野比のび太みたい…」と思い、
それから変化したアオサギの姿を見て「これは意図的に被せにいってるな…」と感じました。
- のび太の未来を変える色が青い友達、ドラえもん
- 眞人の過去を変える色が青い友達、アオサギ
みたいな。
謎の洋館=スタジオジブリ?
大叔父さまが作ったとされる謎の洋館。
しかし、厳密には空から降ってきた塔(?)を取り囲んで建てられた建物で、建てる途中で多くの犠牲を払ったと明かされます。
- 空から降ってきた洋館の中身=アイデア(元ネタ)
- 謎の洋館=スタジオジブリ
のメタファーなんじゃないかな…と。
無から何かを生み出せるクリエイターって居ないと思うんですよね。
ものすごい作品を作っていても、何かしらに影響を受けているはずです。
たとえば宮崎駿監督は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』に影響を受けているらしいです。
呉:宮崎駿(1941〜/映画監督、アニメーター)は、サン=テグジュペリを尊敬している。
加藤:はい、『天空の城ラピュタ』の「君をのせて」という曲の作詞は、宮崎駿です。「あの地平線 輝くのは どこかに君をかくしているから」の「かくしているから」は、『星の王子さま』の「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」という言葉からきています。
https://toyokeizai.net/articles/-/419894?page=2
したがって、謎の洋館のエピソードは(宮崎駿監督が作り上げたと思われている)ジブリ作品だけど全てが自分のオリジナルじゃないし、「作る途中でたくさんの人に迷惑をかけたな…」みたいな気持ちの表れなんじゃないかと。
それに、監督自身が一度引退してスタジオジブリを解散した経緯も「洋館が廃墟になって埋められている」のと合点がいきます。
下の世界=宮崎駿監督作品?
途中から“下の世界“に行きます。
劇中では生まれる前の人間(「わらわら」)や、キリコさんの「死んでいる人の方が多い」発言から”あの世”みたいな感じでしょうか?
この”下の世界“は宮崎駿監督作品そのもののメタファーかもしれません。
僕は鑑賞中、”下の世界“に行ったあたりから宮崎駿ファンタジーワールドを堪能できて喜んでいました。
しかし、冷静になって考えると「…にしても”下の世界“には今までの”宮崎駿監督作っぽい要素“が大量にあったよな…」と。
たとえば「わらわら」は『もののけ姫』の「こだま」っぽかったり、波の感じは『崖の上のポニョ』を彷彿させたり。他にもたくさんありました。
それ以外もたくさんの”らしさ“を感じさせる要素がありました。
謎の洋館=スタジオジブリとするなら、その”下”にあるのにも納得できます。
大叔父さま=宮崎駿監督?
ということは…大叔父さまは宮崎駿監督自身のメタファーなんじゃないかと。
- 「本を読みすぎて頭がおかしくなった」=自虐ネタ
- 世界を作る仕事を誰かに継がせたい=ジブリの後継者が欲しい心情。
- インコの王様が適当に積み木を積むと世界が壊れる=でも適性のない人が継いだらジブリの世界観は崩壊する。
- 結局、眞人は大叔父さまの後を継がない展開=「でも、やっぱ若者は”継ぐ”んじゃなくて新しい何かを作った方がいいと思う」みたいなメッセージ。(このメッセージは大叔父さまからではなく、ストーリー展開として示唆されています。監督の割り切れない感情が読み取れる気がします。笑)
眞人=宮崎駿監督?
…とはいえ、眞人にも宮崎駿監督の投影っぽい要素を感じられたんですよね。
クリエイターとしての自分を投影したのが大叔父さま、パーソナルな自分を投影したのが眞人みたいな。
生まれた年代も近そうですし(宮崎駿監督は1941年生まれ)、疎開していたらしいですし。
いや…もしかすると大叔父さま=未来の眞人の可能性もワンチャンあるかもしれませんね。
時系列はおかしいですけど、“下の世界“の年齢の時系列は結構自由な感じでしたし。
アオサギ=鈴木プロデューサー?
謎の洋館がジブリのメタファーだとすると、朽ちたスタジオジブリに眞人を呼び込むアオサギは鈴木敏夫プロデューサーのメタファーの可能性もあるかもしれません。笑
眞人=宮崎駿監督だとすると、眞人とタッグを組んでいる意味でも。
あと、鈴木プロデューサーって青系の服着てるイメージありますしね。(これは強引か笑)
映画のタイトル
で、映画のタイトルですが。
個人的には、「(僕はこう生きたよ。その上で、)君たちはどう生きるか?」みたいな問いかけに思えました。
数多くの宮崎駿監督自身とジブリに関するメタファーが散りばめられていた気がしたので、この映画はおそらく「自伝」の側面が強いんだろうなと。
さいごに
まず、宮崎駿監督の新作が見れたのがうれしかったですね。
一時は引退宣言されていたので。
Dream Theaterで例えると『Distance over Time』みたいな感じの映画だったなと。(Dream Theaterを知らない人は、まったく意味が分からないと思いますけど。笑)
“お客さんが期待しているもの”が幕の内弁当みたいに入っていて、なおかつ作家性を損なっていないというか。
僕は非常に楽しめたので、気になっている方は見に行ってはいかがでしょうか。
では!(๑˃̵ᴗ˂̵)و
追記
このブログを書いたあとインターネットで感想を見てみたら、意外と「あれ…?もしかしてそんなに評判良くないの…?」って感じでした。笑
僕は面白かったと思ったんですけどね…。
それから、アオサギのモデルはやっぱり鈴木プロデューサーだったっぽいですね!