どんなリズムも理解する方法 -数学的リズム論-

音楽理論・DTM関連

この記事は、 僕が今まで10年くらい考えてきた「ジャンルや解釈などに左右されない「リズム」の仕組み」についてまとめたものです。

できるだけ分かりやすく簡潔に説明したつもりだったのですが、かなりの長さ(2万字以上)になってしまいました。笑

演奏に役立つ部分だけ手っ取り早く読みたい人は目次から

「★12種類のリズムでどんなリズムも把握できる

あたりを読んでもらうと良いかもしれません。

仰々しいタイトルですが、 最終的には「納得できる理解の仕方」人それぞれだと思いますし、何事も自分なりに理解して捉えることが大切だとも思います。

だから、使えそうな所は使うなどして各自で有効活用してほしいです!

では、いきましょう!

  1. はじめに: リズムを構成要素のレイヤーで考える
    1. それぞれのレイヤーの説明
      1. ①前提条件
      2. ②数学的な条件
      3. ③音色
      4. ④演奏記号による指示
      5. ⑤感覚的な要素
    2. 数学的な要素に着目するメリット
  2. ★12種類のリズムでどんなリズムも把握できる
    1. リズムを束で考える(12個のリズムを考える)
      1. 「2の束のリズム」と「3の束のリズム」
        1. 2の束のリズム
        2. 3の束のリズム
    2. ①組み合わせる
        1. 4の束のリズム
    3. ②等分・等倍する
    4. ③基準値を変更する
        1. 連符の比の意味①
    5. さらに①②③を組み合わせて、変拍子や連符を考える
    6. ただ練習は必要
    7. 応用と併用
  3. リズムの実時間の長さ(音価)を考える
    1. BPMを決定する(4分音符の音価を定義する)
    2. 音価を計算する式①
  4. 現在の記譜法について考える
    1. 「1拍」について考える
      1. なぜ3連符は安定して存在できるのか
    2. 「拍子」について考える
    3. 「分音符だけの世界」について考える
    4. 「符点」について考える
      1. ①3の束のリズムを一つの音符で簡潔に表すことができる
      2. 3/4拍子と6/8拍子の違い
      3. ②2の冪の連符を分かりやすく書くことができる
      4. 符点が2つ以上の符点音符
      5. 現在の記譜法の「5」への適応力の低さ
  5. リズムあれこれを計算で求める
    1. 音価を計算する式②
    2. 「分音符だけの世界」を考えるメリット
      1. 「分音符だけの世界」で考えた場合の「分音符( = x分音符)」のxの求め方
      2. 連符の符尾・連桁のしくみ
      3. x分音符と対数を使って、符尾・連桁の数を計算する
      4. 連符の比の意味②
      5. 面倒な計算は機械にやらせよう
  6. 「メトリックモジュレーション」を考える
    1. 拙作での使用例
  7. 「ポリリズム」を考える
    1. 「ポリリズム」の定義を考える
    2. 「ポリリズム」の作り方 
    3. 「1拍」によって分類する「ポリリズム」
      1. ①「短い周期で一巡するポリリズム」
      2. ②「長い周期で一巡するポリリズム」
        1. 音楽は「人間仕様」の活動
      3. 「長い周期と短い周期で一巡するポリリズムが混在するポリリズム」
    4. ていうか、譜面に書きにくいよね。
    5. 「ポリリズム」をどうやって感じればいいのか
      1. 隠し絵(多義図形)を例に「ポリリズム」を考える
  8. 音楽を論理的に考えるということ
  9. おわりに:リズムに興味を持ったきっかけ

はじめに: リズムを構成要素のレイヤーで考える

「リズム」とは何でしょうか。

「メロディ」・「ハーモニー」と並んで音楽の三要素の一つということは知っているという方もいるかと思います。

ただ、一口に「リズム」といっても、この言葉には色々な意味や解釈が存在します。

ですので、分かりやすく議論したり理解したりするにはどうすればいいのか…

と考えた結果、

「リズム」という概念を

多数の「リズムを構成する要素」が、レイヤー (層)の様に折り重なっているもの

だと考えることにしました。

この図は音楽における「リズム」という概念を構成していると思われる要素を、

大きく5つのレイヤーに分類して

上から順に”より抽象的な要素”から”より具体的な要素”に並べて整理したものです。

それぞれのレイヤーの説明

それぞれのレイヤーについて、簡単に説明をします。

①前提条件

当たり前すぎる部分の要素ですが、音楽は絵や彫刻と違い「時間芸術」なので時間の流れが無いと表現できないし、音波が伝わる環境でなければ音楽はできないだろう という意味です。

②数学的な条件

音符や拍子やBPMなど、数学的に定義できる部分です。

この要素も実際に演奏される「リズム」からするとかなり抽象度の高い部分ですが、定量的に考えるのに適しているので、今回は主にこのレイヤーの内容について考えていきます。

③音色

音楽で使用される音にはさまざまな種類があります。

「音」の三要素は「音の大きさ」・「音の高さ」・「音色」と言われますが、

特に「リズム」について考える時は、「エンベロープ(音の時間的な変化)」も非常に重要な要素になってきます。

今回の記事ではこの部分については詳しく触れませんが、軽く説明すると 「エンベロープ(音の時間的な変化)」 を表すパラメーターである「ADSR」は、それぞれ

A.アタック・タイム音を出してから最大音量に到達するまでの時間

D.ディケイ・タイム 最大音量からサスティーンレベルの音量に減衰するまでの時間

S.サスティーン・レベル減衰後の音量の保持量

R.リリース・タイム 音を出すのをやめてから音が消えるまでの音の余韻の時間

の頭文字をとった略称です。

これらはいわゆるリズムの「キレ」や「ノリ」と呼ばれるような部分に関わる重要な要素です。

したがって、 「リズム」を語る場合はこれらの要素を総合して「音色」としてとらえた方が、理解しやすいのではないかと思って、このようなまとめ方をしています。

④演奏記号による指示

フォルテ(強く)やピアノ(弱く)、リタルダンド(徐々に遅く)、アッチェレランド(徐々に速く)など演奏記号による指示も「リズム」に関係する大切な要素です。

大まかなルールはありますが、具体的な変化量は数値で決まっておらず、演奏者が裁量を持つことができる要素でもあります。

⑤感覚的な要素

「実際に演奏されるリズム」に対して一番具体的な要素です。

しかし、 ジャンル・演奏者の習熟度・理解度・解釈・文化・文脈などによって言葉の捉え方が異なる場合があるため、定量的に議論することが難しいことも多い要素です。

数学的な要素に着目するメリット

さて、今回「リズム」を考えるに際しては、この中から「②数学的な要素」に着目していきます。

なぜなら、図の下へ行くほど実際の「リズム」に対してのアプローチは具体的なものになりますが、反対に使用される言葉は抽象的なものになるからです。

たとえば、「⑤感覚的な要素」に分類した「グルーヴ」という概念は、「数値で量れないカッコいいリズムのノリや演奏」といった内容を指す場合が多いです。

大体のミュージシャンの中でなんなくその概念は共有しているものの、はっきりとした定義が決まっているとは言い難い言葉です。

したがって、「リズム」を定量的に論じるときには慎重な扱いをするべきものだと考えられます。

一方、図の上に行けば行くほど実際の「リズム」に対してのアプローチから離れていく代わりに、論理的・数学的に定義できる部分が多くなっていきます。

そのため、「②数学的な要素」に着目するメリットとして

・リズムを体系的に捉えることができる。

・言葉や概念の定義が比較的はっきりしている。

・ジャンル・演奏者の習熟度・理解度・解釈・文化・文脈などによる差が生じにくい。

などが挙げられます。

もちろん、最終的に実際の音楽の中では、これらの要素が全て統合されて「リズム」が演奏されることになるので、特定の要素だけで良い音楽をすることは難しいです。

ですが、 「リズム」について基礎的な仕組みを理解したり、定量的に「リズム」を捉えたりするためには、まず特に「②数学的な要素」への理解を持つことは意義があることだとも考えています。

それでは、これらを踏まえたうえで「②数学的な要素」に着目した「リズムの把握の仕方」を見ていきましょう。

★12種類のリズムでどんなリズムも把握できる

音楽では古今東西さまざまな「リズム」が使われていますが、僕は

最低12種類のリズムを知るだけで、実質全てのリズムに応用することができる

と思っていますし、実際に大体そのように考えて演奏をしています。

以下では、その理由と方法をまとめました。


ここでは、あるリズムの打点音を「出すか・出さないか」2通りの可能性だけが考えられるものとします。

●←音を出す(音量1) 〇←音を出さない(音量0)

(単純化のため音色や音高は無視して、音量を0か1で捉えるという意味です)

リズムを束で考える(12個のリズムを考える)

また、「特定の数でグループ化されたリズムの打点」を「束」と表現することにします。

たとえば

● 〇 | ● ● | 〇 ● | 〇 ●

↑図のように2つずつ区切られたリズム「2の束のリズム」が繋がっていると考えます。

●  〇  〇 | ●  〇  ● | ●  〇  ● | ●  〇  ●

↑図のように3つずつ区切られたリズム「3の束のリズム」が繋がっていると考えます。

「2の束のリズム」と「3の束のリズム」

では、「2の束のリズム」と「3の束のリズム」の、それぞれ全ての打点で、音を出すか・出さないかの可能性の組み合わせを考えます。

以下では例として分かりやすいように、まず●を四分音符、〇を四分休符で表現します。

2の束のリズム

2の束のリズムは、この4通りのリズムが考えられます。

3の束のリズム

3の束のリズムは、この8通りのリズムが考えられます。

よって、 「2の束のリズム」と「3の束のリズム」 で計12通りのリズムの組み合わせが考えられることが分かります。

これが 12種類のリズム」です。

これらのリズムをさらに①組み合わせる ②等倍・等分 ③基準値の変更を行うことで人間に知覚できる全てのリズムを考えていきます。

①組み合わせる

まず、組み合わせによる他のリズムへの対応を考えていきます。

たとえば「4の束のリズム」の組み合わせ「2の束リズム」を2つ繋ぎ合わせることで理解・表現できます。

例を挙げると、このような 「4の束のリズム」

「2の束リズム」の4通りの組み合わせのうち↓このリズムと

↓このリズム

を順に繋ぎ合わせたものであることが分かると思います。

他にも

このようなリズムであっても、

「2の束リズム」の組み合わせのうち↓このリズムと

「3の束リズム」の組み合わせのうち↓このリズム

を順に繋ぎ合わせたものとして捉えることができます。

このように 「2の束のリズム」と「3の束のリズム」 の組み合わせによって色々なリズムを理解することができます。

4の束のリズム

ちなみに、このように「2の束のリズム」と「3の束のリズム」 の12種類の組み合わせでさまざまなリズムを考えることができるのは確かですが、

実際に音楽を演奏したり作ったりするときのことを考えると「4の束」の16通りの組み合わせ↓も覚えておくと色々なものに素早く対応できるので便利です。

なぜなら、実際の世の中には4拍子の曲が圧倒的に多い上に、16分音符を考えるときに役に立つからです。

4の束のリズム計16通りの一覧

②等分・等倍する

次は、組み合わせたリズムの等分・等倍にあたるリズムを考えることによってさらに色々なリズムへ適応を図っていきます。

たとえばこのリズムと

このリズム

BPM(テンポ)が同じ場合、ちょうど速さが倍になった同じリズムになります。

これは、打点のタイミングの比が同じということです。

つまり、上のリズムを理解していれば、あとは速度を変えれば

下のリズムも同じ種類のリズムとして理解することができるということです。

(その逆もまた然りです。)

このように考えると、たとえばこの

4の束のリズム 16通りを理解することによって

その倍であるこの↓リズム、

さらにその倍であるこの↓リズム

これらがそれぞれ同じタイミングの比で打点が構成されていることに気づくことができると思います。

③基準値を変更する

最後に基準値を変更すると、連符の理解にまで対応できます。

たとえばこの 「3の束リズム」の組み合わせと

この2拍3連符のリズムの組み合わせは

基準値が変更されていますが、 こららもそれぞれ同じタイミングの比で打点が構成されています。

リズムを全て覚えようとすると大変ですが、このように理解していくとそれぞれの関係性から考えることができるので全てを覚える必要はなくなるというわけです。

連符の比の意味①

ちなみに、よくみられる連符の

↑このような書き方は省略形で、

このように比の形で書くのが丁寧な書き方です。

この「3 : 2」の場合、

「8分音符(音符の形や符尾・連桁の数から判別する)が2個分の長さを3等分している」

という意味になります。

さらに①②③を組み合わせて、変拍子や連符を考える

最後に変拍子や連符についての対応を考えます。

これも、 「2の束のリズム」と「3の束のリズム」 の12種類の組み合わせで考えます。

先ほど①で紹介したように ↑5拍子は2+3または3+2

6拍子は2+2+2または3+3

7拍子は2+2+3や3+2+2…

という感じで組み合わせることによってどんな変拍子の理解にも対応できます。

連符はこのように考えた拍子(リズムのまとまり)↓の

基準値を変更して連符として捉えればいい↓ので、

これで連符にも対応できます。

ただ練習は必要

というわけで、たった12種類のリズムからいろいろなリズムを考えることができました。

こういう視点を持っていると、一見難しそうなリズムであっても細かく見ていけば単純なリズムの組み合わせであることが分かると思います。

ただ、やはり理解できることと演奏できることは違います。

実際の演奏や作曲と対応させてスムーズに使えるようにするためには、ある程度練習をする必要があると思います。

応用と併用

ちなみに、リズムを簡単に把握する方法として、言葉に当てはめて考える方法もあります。

たとえば、5連符は5文字の言葉(「メロンパン」や「夏休み」など)に当てはめます。

連符の場合スピードが速くなる可能性が高いので、特に連打の場合

言葉に当てはめて演奏に落とし込む方が把握しやすい場合もあります。

実際の演奏では、適宜理解しやすい方法を使うと良いと思います。

さて…演奏にすぐ使えそうな実用的な内容大体はここまでです笑

リズムの実時間の長さ(音価)を考える

BPMを決定する(4分音符の音価を定義する)

ここまでの内容で、さまざまなリズムについて結構対応できると思いますが、

実はまだ十分ではありません。

なぜなら、今まで考えてきたリズム=「音符の種類」が示すのは相対的な音符の長さの違いだからです。

リズムをしっかりと定義するには、これに加えて音符の時間的な長さ(音価)」を定義する必要があります。

たとえば音価を500ms(=500ミリ秒=0.5秒=1秒の半分の長さ)で固定した場合

BPM=240の2分音符

BPM=180の符点4分音符

BPM=160の4拍3連

BPM=120の4分音符

BPM=80の2拍3連

BPM=60の8分音符

などは 全て500ms」で同じ長さの音価を持つ音符になります。

(これは「メトリックモジュレーション」の仕組みに繋がる話ですが、それはあとで書いています。)

したがって、実際にリズムを演奏するときにはBPMを指定して4分音符の「時間的な長さ」を定義する必要があるわけです。

(…書き方がとてもまわりくどいですが、当たり前といえば当たり前のこと言ってるだけですよ。)

音価を計算する式①

では、BPMの重要さが分かったところで、実際に音価を計算してみましょう。

音価を考える時に使う数は

60000ms (6万ミリ秒=60秒 つまり、1分)

BPMの値(60秒を何分割かして、その長さを4分音符の長さとする)

分音符の種類(…全音符をまず何分割するか)

符点の数(分音符にいくつ符点が付けるか)

連符の分割数(それを何連符に分割するか)

です。

たとえば 4分音符の音価を求めるためには

 ・4分音符の音価(ms) = 60000ms÷BPMの値 

の計算をします。

BPM=60の場合

60000÷60で4分音符の音価は1000ms(=1秒)になることが分かりますね。

そして、そこから全音符の音価を定義できます。

4分音符が4つ分で全音符の長さになるので

 ・全音符の音価(ms) = 4分音符の音価(ms) × 4 

の計算をして全音符の長さを決めます。

なぜ全音符の長さを求めるかというと、基本的に音符の長さは

全音符を 「4分音符」や「2分音符」など 「分音符」で何分割かした後、

(それに符点をつけるかつけないかどうかの決定をして

②さらに「連符」で分割するという

全音符を2つの概念で2段階に分割する仕組みをとっています。

よって、音価を計算する場合、全音符の音価を先に求めておくと便利だからです。

この内容はもう少し下の方で詳しく説明しています。

現在の記譜法について考える

「1拍」について考える

まず「1拍」について考えます。

音楽をやっていると何気なく「1拍」という言葉を使ってしまいます。

しかし、実はこの「1拍」という言葉も、しっかりとした定義がない曖昧な言葉だったりします。

というのも、「1拍」 は基本的に4分音符を指す場合がほとんどですが、

符点4分音符や8分音符、2分音符などが「1拍」を指す場合もあります。

そもそも、譜面がなければ 「1拍」 は人それぞれの主観に依る場合もあります。

だから僕は「1拍」は、リズムをとるとき(ダンスのカウントなど)「感覚的に単位として考えられるリズムの長さであり、「多くの曲の場合それが4分音符になっている」と捉えています。

なぜ3連符は安定して存在できるのか

ところで昔、「1÷3は0.333333…になるし割り切れないよな…3連符って不安定なのかな?」ということが疑問だった時期がありました。

結論を先に言うと、「商が10進法で割り切れない(循環小数になる)からといって正確に等分できるかとは関係がない」ということなのですが、

ここまでの内容を使うと、この疑問について具体的に考えることができます。

先ほど、60000ms (=1分=60秒)を「BPM」で分割し4分音符の音価を定義ましたよね。

つまり、基本的に「4分音符」を「1拍」として考えるので、忘れてしまいそうになりますが、

3連符は「1÷3」をしているのではなく、「1としているもの」を3で割っているのです。

たとえば、BPM=100の4分音符の音価は 60000ms÷100(BPM)=600msです。

これを3で割って1拍3連符にすると600ms÷3=200ms で割り切ることができます。

「いや、待ってでもBPM=60の場合、4分音符の音価は1000msになるから3で割り切れないのでは…?」

と思うかもしれません。確かにこの場合3で割り切ることはできません。

しかし、これも「元々1分という時間を60秒としている」から割り切れないだけなのです。

つまり、割り切れないからといって等分ができないわけではありません。

理解している人からすれば当たり前のことかもしれませんが、ここを見逃していると数学的に音符を考える時に、つまずくことになるのではないかなと思ったので書きました。

ちなみになぜ、時間に60進法(1分が60秒など)を使うかというと、

60」という数字は「100までの数の内で、最も約数の多い数字のひとつ」で、なおかつ1,2,3,4,5,6全てで割り切ることができる数なので、計算するときに便利だからと言われています。

「拍子」について考える

音楽ジャンルによって拍子の考え方は変わってきます。

クラシックの場合は「2拍子は1拍目を強く、2拍目を弱く…」など

拍子ごとのアクセント差のセオリーがありますが、

リズムを数学的に捉えることを目的とした場合「拍子」は、「1拍」とは違う、「もう一つ上の階層でリズムをグループ化したもの」と考えるといいかなと思います。

つまり、「弱拍や強拍の違い」などを探るよりも、演奏する際にリズムが分かりやすく、表記が簡潔になる「拍子」を選ぶと良いということです。

これについて異論もあるでしょうが、現在はあくまで「数学的な要素」に着目して考えています。

実際には「4拍子の3連符表記」、「12/8拍子」、「シャッフル」、「スウィング」など数学的には同じと考えられるリズムでも、それぞれ微妙に違うリズムを指して語られることもあります。

これはもう少し抽象度が低い要素(⑤感覚的な要素など)での解釈の多様性が関係していると僕は考えています。

「分音符だけの世界」について考える

通常「〇分音符」の〇に当てはまる数字の種類は、

2分音符、4分音符、8分音符、16分音符、32分音符…

というように「2の冪(2の累乗数)」で考えられますね。

中には「なぜ3分音符や、5分音符はないのか?」という疑問を持たれる人もいるんじゃないでしょうか。

僕も「なんでかな~」と思っていた時期がありました。

色々と考えた結果、今のところの結論は「今の表記の方が便利だから」です。

分音符は、何を“分”けているかというと

全音符“↓ですよね。

つまり3分音符が存在するとすれば、全音符を三等分した長さの音符になるわけです。

現在はこの 全音符を三等分した長さの音符をどう表しているか?というと

こちら↓4拍3連符です。

全音符を3等分しているので、3分音符といえる

この発想を理解したところで「分音符だけの表記」と現在の「分音符に分割してから、連符によって分割する表記」を比べてみます。

・3分音符 = 4拍3連

・6分音符 = 2拍3連

12分音符 = 1拍3連

24分音符 = 半拍3連(=1拍6連)

いかがでしょうか。

僕は現在の表記の方が便利だと思います。

なぜなら、現在の表記の場合は「3の束のリズム」=「3連の感覚」を体得すればこれらのリズムは全てその応用で理解・演奏可能になるからです。

一方で、「分音符だけの表記」にすると直観的に感覚を掴むのが難しくなる上に「1拍」をとるポイントがわかりずらくなり不便です。 (今の表記に慣れてすぎているという部分もあるかもしれませんが)

だから、“「分音符」の種類に使う数は「2の冪」だけにして、他の数で分割を行う時は「連符」を使う”という現在の「全音符を2段階の概念で分割するシステム」が採用されたのだと思います。

「符点」について考える

音符を表すパラメーターの中に「符点音符」というものがあります。

こちらについても考えてみます。

「分音符だけの世界」を考えたときと同様、この「符点音符」表記が無くても「分音符」と「連符」だけでもリズムを表すことはできます。

ではなぜ、この概念が必要だったのかを考えてみたところ、

こちらも今のところの結論は、便利だからです。笑

僕がそう考える理由は主に2つあります。

①3の束のリズムを一つの音符で簡潔に表すことができる

世の中には4拍子の曲の次に、3拍子…というか「3の束のリズム」を使った曲が多いです。

Dvorak – Slavonic Dance Op. 72 No 2 Dumka (with sheet music)

しかし、「符点音符」がなければ、「3の束のリズム」 に値する音符を1つで書くことができません。

このように↓いちいち音符をタイでつなぐよりも

このように ↓ 符点2分音符をひとつ書く方が、楽で分かりやすい場合が多いです。

また6/8拍子は、「2拍子」と考えられ「1拍」=符点8分音符で表現されます。

このような表現をするために、符点音符という書き方があるのはとても便利です。

3/4拍子と6/8拍子の違い

少し寄り道ですが…

「3/4拍子と6/8拍子は分数で考えると同じ量なので、何が違うの?」と思う人も多いと思います。

たしかに分数を約分をすると、どちらも3/4になりますが、拍子の場合は、3/4拍子は3拍子、 6/8拍子は2拍子でとるんだよ」みたいな説明を受けた人も多い気がします。

これは実際(特にクラシックなどでは)その通りなんですが、もう少し突っ込んで考えると、

6/8拍子は「3と2のポリリズム」を表すための拍子であるとも考えられます。

3/4拍子は「単純拍子」、6/8拍子は「複合拍子」というものに分類され、

6/8拍子「1拍」は4分音符ではなく、符点4分音符(8分音符3つ分)です。

つまり、 6/8拍子は「3の束のリズム」と「2の束のリズム」が同時進行している形になります。

したがって、 3/4拍子と6/8拍子をわざわざ分けたのは、同じ長さのリズムであっても

「ポリリズムと非ポリリズムを区別したい」という欲求があったからと僕は理解しています。

(ポリリズムについては後半もう少し詳しく書いています。)

②2の冪の連符を分かりやすく書くことができる

さて、話をもどします。符点音符もう一つの利点は

「2の冪の連符を分かりやすく表現できるため」です。

これは「符点音符」が、3の束を偶数で分割する2の冪の連符(2連符、4連符など)と実質同じだからです。

たとえば、3/4拍子でこのように4連符を書くよりも

このように↓符点8分音符で表した方が、実際は同じですがリズムを掴みやすい気がします。

これは、

多くの人が4分音符=「1拍」を基準にリズムをとるため、「符点音符」でリズムを考えると、そのまま「1拍」の基準を変えずに対応できるためだと思います。

一方、上の 4連符(2の冪の連符表記)の場合、

4分音符ではない分音符(この場合3の束のリズム) 「1拍」 と捉え直し

さらにそれを改めて2の冪の数の連符(この場合4)で分割しなければいけません。

だから、「2連符」や「4連符」などの表現すると、リズムを掴みづらいと思う人が多いのではないかと思います。

符点が2つ以上の符点音符

さて、符点音符についてみてきましたが、実は符点の数が2つ以上ある符点音符も存在します。

符点の数が2つのものを「複符点音符」

3つのものを「3重符点音符」

4つのものを「4重符点音符」などと呼びます。

ぶっちゃけここらへんの音符が曲に使われているのは、ほぼ見たことはありませんが、これらの符点音符の仕組みについても考えます。

「符点」の数をdとすると 符点音符の音価

 符点が付いた分音符の元の長さ(ms)×{2 – (1/2^d)} 

で表すことができます。

また、符点部分の音価は

  符点が付いた分音符の元の長さ(ms) ×{(2^d)-1} /2^d 

で表すことができます。

ということで

符点音符」は元の音符の1.5倍

(元の音符の長さの×0.5の長さが符点として付加される。)

複符点音符 は元の音符の1.75倍

(元の音符の長さの×0.75の長さが2つの符点として付加される。)

「3重符点音符 は元の音符の1.875倍

(元の音符の長さの×0. 875の長さが3つの符点として付加される。)

の音価を持つ音符ということになります。

4個以上の符点音符も同様の考え方で求められます。

(…ただ、いつ使うねん とは思いますが…笑)

現在の記譜法の「5」への適応力の低さ

ここまで現在の記譜法のメリットを紹介してきましたが、

この符点音符のルールから派生して僕がデメリットだと思う部分を紹介します。

それは、1~8の数の中で「5」のまとまりだけが「それを1つの音符で表す表記」が無いことです。

先ほどの符点音符の数値計算を変形してみると

符点音符 (基準の分音符÷2)×3

複符点音符 (基準の分音符÷3)×7

と表すことができます。

これは、

たとえば「1拍」=4分音符とした場合、

符点2分音符を用いれば「3拍」

複符点全音符を用いれば「7拍」

1つの音符で表現することができるということです。

「1拍」、「2拍」、「4拍」、「8拍」はそれぞれ4分音符、2分音符、全音符、倍全音符

「6拍」は符点全音符で表すことができるので

「5」のまとまりだけ「それを1つの音符で表す表記」が無いことが分かります。

簡単に表せないものは、自然と「それを使う」という選択肢から除外されやすくなり、使用率が下がってしまう原因になると考えられます。

たとえば、 昔はモノフォニー(単旋律)の音楽が主流だったそうですが、現在のようにメロディと和声(ハーモニー)が複雑化したのは、現在の記譜法が複雑な和音やメロディを書き記しやかったためだと言われています。

そういう視点で考えてみると、現在よく聴く曲の「リズム」の複雑性は「メロディ」や「ハーモニー」に比べて随分低い気がするので、それは現在の記譜法のこのような弱点も影響しているのでは?と思います。

リズムあれこれを計算で求める

この項目ではリズムに関係するものを数値計算で表していきます。

音価を計算する式②

今まで見てきた内容を全てを踏まえて

・分音符の種類(…全音符をまず何分割するか)を n

・符点の数(分音符にいくつ符点が付いているか)を d

・連符の分割数(それを何連符に分割するか)を t

とすると

 [(60000(ms)÷BPM×4)÷n}×2 – (1/2^d)]÷t   (ms) 

という式が考えられます。

これでおそらく全ての種類の音符の音価を計算することができます。

「分音符だけの世界」を考えるメリット

さきほど説明したように、 「分音符だけで捉えた表記」 は演奏にあまり適さない捉え方と言いました。しかし

・「符尾・連桁の数を求めるとき」

・「メトリックモジュレーション」を使う際の移動する先の「同一の音価を持つ音符の種類」を割り出すとき(くわしくは後述 )

・「ポリリズム」を考えるとき

などでは、この考え方が実は役に立ちます。

「分音符だけの世界」で考えた場合の「分音符( = x分音符)」のxの求め方

 全音符の音価(ms) ÷ 指定した音符の音価(ms) = x 

この計算式で指定した音符を、「分音符だけで捉えた表記」である

いわば「x分音符」として表すことができます。

先ほど紹介しましたが「4拍3連」なども、音価を求めてこの式にぶち込むと「3分音符」であることが分かります。

連符の符尾・連桁のしくみ

基本的に連符の「符尾・連桁の数」は(本来の2の冪で表される)分音符を基準に考えられています。

たとえば、8分音符の「符尾・連桁の数」は1つ、16分音符の「符尾・連桁の数」は2つですよね。

このとき、ある連符の音価L(ms)が

 8分音符の音価(ms)≧ 連符の音価 L(ms)>16分音符の音価(ms) 

のときこの連符の「符尾・連桁の数」は1つになるということです。

たとえば連符をBPM=120の「1拍3連」で考えると

音価Lは=166.666666…(ms)です。

このとき8分音符の音価は250(ms)、16分音符の音価は125(ms)なので

250(ms)≧ 166.666666… (ms)> 125 (ms)

となり

8分音符の音価(ms)≧ 連符の音価 L(ms)>16分音符の音価(ms)

が成り立つので、「符尾・連桁の数」は1つになるというわけです。

x分音符と対数を使って、符尾・連桁の数を計算する

といっても「1拍3連」の場合は、

もう既に「符尾・連桁の数」を暗記している人も多いかと思います。

しかし、音符がもっともっと細かくなってくると

「符尾・連桁の数」が何本か分かりにくい場合もあると思います。

このとき「x分音符」の値を使って以下の計算を考えます。

  log2(x) – 2 (の整数部分を見る) 
縦軸は 「符尾・連桁の数」で、横軸は「x分音符のx値」です。
このグラフは log2(x)-2 でGoogle検索すると色々動かして表示できます。

これで 「符尾・連桁の数」が 分かります。

たとえば、さきほどのBPM=120「1拍3連」 「符尾・連桁の数」 をこの方法で計算する場合

BPM=120の全音符は2000(ms)のため、2000(ms)÷166.666666…(ms)12

1拍3連」は分音符だけで表すと「12分音符」であることが分かります。

では、上の計算式に当てはめて

log2(12) – 2 を

計算すると1.5849625….

整数部分1です。

したがって「符尾・連桁の数」が1つの音符であると分かります。

同じように「16分音符」や「1拍5連」などは、

この式の答えの整数部分の値が2になるので、

「符尾・連桁の数」が2の音符であると分かります。

ちなみに、この値が0以下の時は、 「符尾・連桁の数」 は0になりますが、「-2」の時は全音符、「-1」の時は2分音符、「0」の時は4分音符を表していることになります。

連符の比の意味②

この計算を応用して連符の比を数式で表すこともできます。

先ほどの

分音符の種類(…全音符をまず何分割するか) n

・符点の数(分音符にいくつ符点が付いているか) d

・連符の分割数(それを何連符に分割するか) t

に加えて

・全音符の音価 ÷ 音価 を x  (この音符を「x分音符」で表すということ)

(符尾・連桁の数 を表している) log2( x )の整数部分の値を A

とします。


d重符点n分音符のt連符の、「連符の比」を表すとき

d重符点n分音符(連符で割る前)の音価 ÷ (全音符の音価 ÷ 2^A ) = m とすると 

このとき連符の比は

  m  : t 

と表すことができ、この意味は

「2^A 分音符が m 個分の長さを t 等分している」になります。

※ただ連符の分割数≦符点の数の場合は、「2分音符が1.5個分の音価を2等分している」のように意味的には間違っていませんが、ちょっと良い感じでさばいてくれません。そこで”2^{t+(d-t)}“の値をそれぞれ 2^Amにかけるとさらに分かりやすくなると思います。

面倒な計算は機械にやらせよう

という具合に説明してきましたが、

いや…こんなのいちいち計算するの面倒くさいだろ…と思ったと思います。笑

それはその通りで、僕もこんなことをいちいち考えているのではなく、Excelを使って値を入力したら結果を表示してくれるプログラムを作って、それを使っています。

むしろ、このあたりの内容はこのようなプログラムを組むために考えた部分もあります。

リズムシート改良版

ちょっとこのExcelのファイル全体は企業秘密的な意味で公開できませんが笑

同じような内容を計算してくれるPythonで書いたコードとかをGitHubに置いてあるので、使いたい方はこちらを使ってください。

「メトリックモジュレーション」を考える

さぁ…この長い話もいよいよあと少しです。笑

メトリックモジュレーションとは、リズムの転調のような概念です。

BPMを指定しなければ、同じ長さの音価を持つ音符は色々と考えられるという話をしましたが、

この性質を利用してテンポが変わったように錯覚させる、もしくは整合性をもってテンポチェンジをする手法のことを指します。

一番単純なものは、いわゆる「倍テン」「ハーフタイム」と呼ばれていますが、もっと複雑な関係性にある”同じ音価を持つ音符のBPM”も計算で割り出すことができます。

計算の仕方は、移動先のBPMの音符を「分音符だけ」で表したものをy分音符とします。

・指定した音符と、y分音符が、同じ音価になるbpmを求める式は

 60000(ms)÷ (現在のBPMで指定した音符の音価(ms)×y÷4) =移動先のy分音符のBPM 

となります。

よく使えそうなyの値としては

8/3(符点4分音符)、16/8(符点8分音符)、8(8分音符)、16(16分音符)、12(1拍3連)、20(1拍5連)

などがあると思います。

たとえば現在BPM=120で、指定した音符が4分音符 500(ms)

この4分音符と同じ音価になる符点4分音符(8/3分音符)を求めたい場合

60000(ms) ÷ (500(ms) × 8/3 ÷4)

=60000(ms) ÷ 333.33333….

=180(BPM)

となりBPM=120の4分音符とBPM=180の符点4分音符の音価が等しいことが分かります。

この計算を使えばメトリックモジュレーションを使ったリズムトリックを比較的簡単に考えることができます。

拙作での使用例

KHUFRUDAMO NOTESの楽曲「YAMATOの中間部分では、BPM=150→112.5というテンポチェンジをしていますが、

【Japanese Djent】YAMATO【TAM100】 – KHUFRUDAMO NOTES

これは最初のBPMで「1拍3連」に当たる音価が、次のBPMの「16分音符」の音価と等しくなるよう関連性を持たせたテンポチェンジになっています。

「ポリリズム」を考える

最後は「ポリリズム」について考えて終わりにしたいと思います。

「ポリリズム」の定義を考える

基本的に「複数のリズムのまとまり」が同時並行的に進行しているリズム

を指してポリリズムと言います。

ですが、この定義でポリリズムを考えると

「4分音符と8分音符のリズムが同時に鳴っている」場合なども

ポリリズムであると言えてしまします。

しかし、これはただの4分音符と8分音符の混ざったリズムと思う人がほとんどで、

これを「ポリリズム」と言っている人にはあまり出会ったことがありません。

(というかありません笑)

ということは、「”互いに素”ではない組み合わせは、あまりポリリズムとは考えない」という内容も付け加えた方がより実際のポリリズムの認識に近い説明になるかなと思います。

※互いに素…ある整数a, b を共に割り切る正の整数が 1 のみであること (最大公約数が1)

「ポリリズム」の作り方 

では、実際にポリリズムを作る時の考え方を見ていきましょう。

ポリリズムを考える時は重ね合わせる「リズムのまとまり」同士の最小公倍数を求めます。

たとえばA.(4のまとまりのリズム)B.(3のまとまりのリズム)という

2つのリズムのまとまりでポリリズムを作りたい場合

AとBの最小公倍数は12になりますよね。

すると、この2つのリズムのまとまりから作られるポリリズムは

「12を基準に考えれば良い」ということが分かります。

図で表すと

A.(4のまとまりのリズム) は、このように12を3つ飛ばしで進み一巡し、

●○○ ●○○ ●○○ ●○○

B.(3のまとまりのリズム)は、12を4つ飛ばしで進み一巡します。

●○○○ ●○○○ ●○○○

よって12という数を用いると同じ基準の上で考えられることがわかります。


もう一つ例を見ておきましょう。

5のまとまりのリズムと4のまとまりのリズムのポリリズムを考えます。

5と4の最小公倍数は20のため20を基準に考えます。

図で表すと

5のリズムは、このように20を4つ飛ばしで進み一巡し

●○○○ ●○○○ ●○○○ ●○○○ ●○○○

4のリズムは、20を5つ飛ばしで進み一巡することがわかります。

●○○○○ ●○○○○ ●○○○○ ●○○○○

「1拍」によって分類する「ポリリズム」

ポリリズムの数学的な仕組みが分かったところで、もう一つ考えたいことがあります。

それは数学的には同じ仕組みでも、感覚的には扱いが異なる「ポリリズム」です。

それは

①このような↓「ポリリズム」と

DCPRG – 構造Ⅰ (現代呪術の構造)~Live Version
5(バスドラのキック)と4(ベースのフレーズ)のポリリズムになっている。

②このような↓「ポリリズム」の違いです。

Dream Theater – Beyond This Life
キーボードソロのソロとリフがそれぞれ
(4/4拍子×8+2/4拍子)と(17(9+8)/8拍子×4)
のポリリズムになっている。

聴いてみてどう感じたでしょうか?

なんだか違う種類のものに感じられると思います。ただ、数学的な構造としては同じものです。

どこが違うかというと、「1拍」に複数の解釈が生まれるかどうかの差だと僕は考えています。

①「短い周期で一巡するポリリズム」

複数のリズムを重ね合わせたとき、最小公倍数を求めて基準の数字を決めました。

この基準の数字を16分音符など細かい音符で刻むなどして、結果として一巡するスピードが速かった場合

「1拍」複数の解釈が生まれやすくなります。

たとえば、このようなリズムを考えます。

↓これは4のまとまりのリズム3のまとまりのリズムのポリリズムで

4と3の最小公倍数(=基準の「12」)を16分音符で刻んでいます。

このリズムは「4分音符」と「符点8分音符」のどちらを「1拍」にしても成り立つ場合が多いです。

「4分音符」 を「1拍」にすれば3拍子

「符点8分音符」 を「1拍」にすれば4拍子というわけです。

このように「1拍」複数の解釈ができる可能性が高いことで、いろいろなリズムのノリ方が生まれるのが、この種類のポリリズムの面白さです。

ちなみに、先ほど上の方で説明した複合拍子の6拍子(2と3のポリ)や、9拍子(3と3のポリ)や、12拍子(3と4のポリ)はこのようなポリリズムの表記に用いられることが多く、この辺りの単純なポリリズムは「もはやポリリズムと感じられない」という人も多いかもしれません。

②「長い周期で一巡するポリリズム」

一方、 基準の数字を4分音符などで刻む 「長い周期で一巡するポリリズム」 はどうでしょうか。

これは↓上が5、下が4のポリリズムですが、このような場合

どちらのリズムのまとまりにせよ「1拍」は4分音符で感じる人が大半ではないでしょうか。

もちろん、書くときに20/4拍子みたいな拍子として全音符を1拍と捉えて…とすればシステム上同じ意味になりますが、やはり受け取る感覚は違うと思います。

このようなポリリズムの場合「1拍」は共有できていますが、変拍子の要素を含むことが容易なるなど、より複雑なリズム感を演出できるところがこの種類のポリリズムの面白さです。

音楽は「人間仕様」の活動

このようにある視点では同じものでも、別の視点では違うものとしてカテゴライズされているものは(他のものでもありますけど) 音楽には結構よくあります。

この理由の一つとして「音楽」が人間の認知能力や感覚の分解能に合わせた「人間仕様」の活動だからだと思います。

「音楽」が成り立ちうる条件というのは意外と狭く、たとえば、人の可聴領域(音が聞こえる範囲)は概ね20Hzから20000Hzです。

これは、人間が特定の速さ(秒間20回から2万回くらい)で起こる媒質(主に大気)の圧力変化しか「音」として認識できないためです。

もっと遅かったり速かったりするスピードで起こる大気圧の変化を「音」として認識することはありません。

ですが、大気圧の変化であるという視点では同じです。

他にも、「メロディ」と「和音(ハーモニー)」は音楽では別の要素として考えますが、自然界の音には全て倍音が含まれることを考えるとこの二つは物理現象としては同じものです。

(人工的に作り出した理想的な純音を除いて)

こういった部分が音楽の魅力でもあり、音楽の捉えどころのなさに繋がっているのかもしれません。

「長い周期と短い周期で一巡するポリリズムが混在するポリリズム」

MEINL DRUM FESTIVAL 2015 – Matt Garstka “Ka$cade” – Animals As Leaders

ちなみに、数学的には②「長い周期で一巡するポリリズム」のリズムの応用として解釈できそうでもあるのですが、捉え方によっては①と②の内容が混在していると解釈した方が良いような、ある意味もう1段階複雑なポリリズムも考えられます。

この曲の最初のここらへんの部分は(おそらく)「20/16拍子(4と5のポリリズム)×2+6/4拍子」4/4拍子×8小節2重構造でポリリズムを作っています。

意外にもこの曲は、基本的に「4/4拍子8小節分の長さで作られたフレーズ」が多いのですが、 4/4拍子8小節分に対して変拍子やポリリズムが2重構造的に組み込まれていることで、かなり複雑なリズムに聴こえるはずです。

ていうか、譜面に書きにくいよね。

上の方で現在の記譜法の「5」への適応力の低さについて書きました。

ここまでの説明や譜面を見てすでに思っていた人もいるかもしれませんが、現在の記譜法はポリリズムに対しても適応力が低めだと思います。

たとえば↓先ほど例に挙げた4と3のポリリズム↓ですが

こういう風↓に書いても(BPMを調整すれば)同じ意味になります。

他にも

これは一見めちゃくちゃなリズムに見えますが、シンバルが4、スネアドラムが5、バスドラムが3ずつ進んでいます。

つまり、16分音符の細かさで最小公倍数「48」(=4分音符で15拍)を一巡しているポリリズムです。

こういう発想に慣れていると説明されなくても分かるかもしれませんが、

ポリリズムの構造を調性や和音やコードネームを読み取るように

パッと見ただけで分かるか?というとなかなか難しい気がします…。

…音楽の勉強といえば「調性や音名やコードネームを勉強するのがメイン」みたいなところもあるので、ただ単にこういうリズム方面に目を向ける人が比較的少ないということも理由として考えられますけど…

「ポリリズム」をどうやって感じればいいのか

さて、ポリリズムを演奏するときには2つ以上のリズムを同時並行的に演奏することになるわけですが、どうやって複数のリズムを感じればいいのでしょうか。

僕の答えは、「ポリリズムであっても1つのリズムとして考えて演奏して、必要に応じてどちらにも感じられるようにする。」です。

隠し絵(多義図形)を例に「ポリリズム」を考える

この絵は「妻と義母」と呼ばれる有名な隠し絵(ダブル・イメージ)で、見方によって「若い女性」と「老婆」のどちらにも見えるという絵です。

少し考えてもらいたいのですが、この絵を

“「若い女性」と「老婆」 のどちらの視点にも切り替えて見ること”

ができたたとしても、「若い女性」と「老婆」 の両方同時に見えることはないと思います。

つまり、その一瞬だけで考えれば

①「若い女性」か「老婆」の絵

②「1つのこういう模様の絵」

のどちらかにしか捉えることができないと思います。

もしかすると、本当に”複数の意味の絵として同時に認識できる人”もいるかもしれませんが、僕には少なくとも無理なので、ポリリズムも同様に考えています。

たとえば、これはシンバルが4、スネアドラムが5で進行するポリリズムのドラム譜面です。

このリズムを”隠し絵 を「1つの模様」 だと考える”ように「1つのリズム」と考えて練習します。

その上で、身体がこのリズムに適応してから“演奏しながらそれぞれ4と5のリズムを捉えられる”ようにしていきます。

つまり、構造としては複数のリズムが混在するポリリズムであっても演奏者は「1つのリズム」として捉えて演奏し、その瞬間で自由にどちらの感じ方にでも切り替えられれば問題なく演奏できるというのが僕の考えです。

たとえば(かなり昔の演奏動画ですが)

Lost Not Forgotten/Dream Theater【Drum cover (with time signatures)】

この曲のこの部分なども、シンバルの刻みと他の楽器とのキメがポリリズムになっていますが、僕の中では「1つの長いリズムパターン」として認識しながら叩いています。

ある意味「1拍」という感覚もリズムをとるのも、その「1拍」を感じながら16分や符点8分音符を演奏しているのも複雑さが違うだけで同じ考え方になるのかな?とも思います。

追記:ポリリズムに関してはさらに詳しく別記事を書いたので、こちらもどうぞ。

音楽を論理的に考えるということ

音楽は「芸術」であり、なんとなく不思議で、捉えどころのないものだと思われがちです。

実際に「なぜメジャーコードを明るく、マイナーコードを暗く感じるか…」など少なくとも今のところ理由がわからない不思議な部分も多くあります。

しかし、反対に「音」という物理現象を扱っているわけですから、論理的に理解しようと思えばできる部分も多くあるわけです。

多くの人が「芸術」というブラックボックスに入れてしまった要素を少しでも論理的に解釈して体系化したり、考えたりすることは、僕は意義のあることだとではないかな…と思います。

おわりに:リズムに興味を持ったきっかけ

さて、ここまで読んだ方、お疲れ様でした。笑

最初にも描いたように、僕がリズム対していろいろと考え始めたのは、今から10年くらい前のことです。

当時はL’Arc-en-Cielのドラムをよくコピーしていたこともあり、ドラムのアクセントが2拍4拍ではないいわゆるスリップビートのリズムパターンを練習していました。

そんな中、ある時に「アクセントを色々とにずらしていくと全然4拍子に聴こえなくなる時がある…というかこれ3拍子やシャッフルっぽくない?!?(^ω^)」ということに気付きました。

この発見をしたあの瞬間は、かなりテンションが上がってEurekaみを感じたことを覚えています。笑 ( それは「メトリックモジュレーション」という技法に繋がる話だったので、車輪の再発明でしたけど)

それから約10年、色々とリズムについては考えてきたのですが、ついに今回、自分がリズムについて考えていることをなんとなく一通り まとめることができたのでわりと感慨無量です。

まだまだ追及が足りなかったり、勘違いしたりしている部分もあるかもと思いますが、この記事を読んだ人が少しでもリズムに対して考えるきっかけになればうれしいです。

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